国際金融問題 節税と脱税 ② 英国領とタックスへーブンの関係 160410

IBT160408 英国は租税回避地?
国商工会議所の年次総会でスピーチをする野党、労働党のジェレミー・コービン党首 ロイター/PETER NICHOLLS
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★しかし このようなことを 計画実行しても 英国の経済が うまく行っているわけではない。経済状況が  悪化して ホームレスが急増し 失業率のアップに 苦しんでいる現状もあるからだ。★
★以前から タックスヘーブンは 節税で 合法的だと言われていましたが 道義的にも 本国が苦しんでいるのに このような 節税脱税を繰り返すのは 間違っていると思う。
★その点 ルワンダでは カガメ大統領が 世界中にちらばる ルワンダのディアスポラを 周り 蓄財が出来た人は お金をもって、 また技術を習得した人は 技術をもって 帰国してほしい 国づくりに参加してほしいと フランスをはじめ 積極的に 説得して回ったところ 多くの人々が 帰国移住して 素晴らしい国になっています。Look Rwanda Policyで ここ6年位 各方面で 提案してきたのは そのためです。
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111. この記事をまず 読んでみよう。

いわゆるパナマ文書の公表以降、英国及び英国領における税法と租税回避の議論が再燃している。この文書は英国とその島しょ部に登録された秘密の企業を多数名指ししたのだ。租税の抜け道として、パナマやスイスほど知られてはいないが、英国は長い間、外国企業や個人に対して比較的税法が緩く、租税回避地だと批判する者もあった。

「『そう、英国は世界最大の租税回避地です』といえば的を射ていることになります」というのは、ロンドン市立大学のリチャード・マーフィー(Richard Murphy)氏(政治経済学)だ。税制改革論者として知られるマーフィー氏は、自分の評価には、英国の保護領や海外領土という「税制のネットワーク」を含んでいると指摘する。

租税回避地(タックスヘイブン)、すなわち外国の企業や個人が全くもしくはほとんど課税されない場所は特定しにくく、どの国やどの領土がこうした基準を満たすのかについて、専門家の間でもしばしば議論になる。定義そのものの問題はあるが、アンドラ、モナコ、パナマ、スイスといった国々は、ビジネス・フレンドリーな税制を持っていると広く考えられている。

「秘匿性ということは定義の1つです」とマーフィー氏は、租税回避地という言葉がしばしば取引の秘密や税回避を暗示すると指摘した。

デビッド・キャメロン英首相と国会議員らは今週、英国の税制改正の可能性について議論を交わした。労働党のジェレミー・コービン(Jeremy Corbin)党首は首相に批判を投げかけることを辞さなかった。英国の税慣習の全面的な見直しを始め、租税回避地として有名な英国領の島々の直接統治を考えるべきだというのだ。キャメロン首相の亡父もパナマ文書に名前が挙がっており、このことも、文書で特定されている英国人全員の完全な税務調査をせよというコービン氏の要求の背景にある。キャメロン首相は父の会社の持ち分の保有や関与を否定している。

「制度的な税逃れや脱税のための土地になっているのなら、何か対策を取らなければならない。政府が受け入れるか、次の一歩を踏み出すべきだ」とコルビン氏は英領バージン諸島について述べた。

パナマ文書で特定された、世界で最も企業数が多い10か所のうち、英領バージン諸島は11万3000社で、ダントツの集中ぶりを示している。パナマのモサック・フォンセカ法律事務所は今週、外部のハッカーによると見られる数百万の情報が流出した後、台風の目となった。この文書は、租税回避のメカニズムとして利用された可能性のある秘密の海外企業を所有する個人(政財界の大物を含む)を名指ししている。文書を公表した国際調査報道ジャーナリスト連合のデータによれば、英領アンギラはリストの7番目、英国は10番目となっている。

英国の法人税は20%前後(例えば米国は40%)で、多国籍企業は外国での収益については課税されない。比較的低い税率があることで、外国企業は英国に呼び込まれ、ロンドンや保護領で事業を開始したりする。このプロセスを合法的に行うために、外国企業が英国企業と合併することもよくある。米国の大手製薬会社ファイザーは、英国税制を利用するため英国のアストラゼネカとの合併を始めたが、6日、米国議会の反対にあって最終段階でとん挫した。

労働党もキャメロン首相の保守党も、税の抜け穴に対応すると約束しているが、英国に利益をもたらすものでもあり、そのままとなってきたのだと指摘する専門家もいる。裕福な多国籍企業とともに裕福な外国人がやってきて、英国の不動産を買い、英国のサービスに金を払い、ロンドンで一番高級な店で買い物や食事をする。こうした企業が来ることで、雇用が増えるという議論もある。

「こうした抜け道が残存しているのは、それによって英国が投資や金融サービスにおいて競争力を持つことができるという理解があったからです」とロンドンのコンサルティング会社のチャールズ・リッチフィールド(Charles Lichfield)氏は言う。

それでも、平均的な英国市民はこうした大金持ち企業の存在から恩恵を受けているわけではないし、こうした抜け道のいくつかを閉じたところで、ロンドンには国際的な影響力があり、金融センターとして競争力を保つだろうと多くの政治家は言う。コルビン氏は抜け道を閉じ、海外の収益が課税されないという税制を引き締めることを熱心に主張してきた。税制が改革されるまで、島しょ部を英国が直接統治することさえ提案する。しかし、政治的には、英国が統治を強めることはなかなか難しいだろうし、こうした抜け穴はまだまだ続くかもしれない。「英国が主権を強めるとか、税制についての監督権限を強めるという状況は考えにくい」とリッチフィールド氏は述べた。

*この記事は、International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Jess Mchugh記者「Is The UK A Tax Haven? London, British Islands Questioned After Panama Papers Leak」)

  プーチン氏、パナマ文書疑惑に反論 「ロシア弱体化狙う試み」

世界の富の4分の1を盗むタックスヘイブン – 格差・貧困・財政危機を拡大する心臓部

テーマ:経済・財政・税制の問題

 ニコニコ動画で、4月20日に配信された「ニコ生×デモクラシー・ナウ『タックスヘイブンの闇』――グローバル経済の中枢にあるのは巨大なブラックボックス」を観ました。『タックスヘイブンの闇――世界の富は盗まれている!』(朝日新聞出版)の著者であるジャーナリストのニコラス・シャクソン氏の主張を中心に番組が伝えていたタックスヘイブン問題を要旨で紹介します。(※ニコラス・シャクソン氏は「タックスヘイブン」と「オフショア」をほぼ同義としていますので、ここでは「タックスヘイブン」で用語統一しています)
 タックスヘイブン(租税回避地)とは何か?
 タックスヘイブンとは、人や組織が規則・法律・規制を回避するために利用する他の地域(典型的には他国)のことです。タックスヘイブン側から見れば、低い税率(あるいは無課税)を提供してビジネスを誘致する場所です。

 つまり、タックスヘイブンは、社会の中で暮らし、社会の恩恵を受けることにともなう義務――納税の義務、まともな金融規制・刑法・相続法などに従う義務――からの逃げ場を提供するのです。
 究極の規制緩和であるタックスヘイブンは
市場の透明性を闇へ葬り去る

 タックスヘイブンは「租税回避地」の名の通り、税金逃れに利用される点が一番大きな特徴ですが、もう一つの大きな特徴として、税金逃れと諸法制逃れの情報を隠すという点があります。すべてのタックスヘイブンは、税金逃れと諸法制逃れの情報を隠すために、他の地域(法域)との情報交換を拒否しています。そこに資金を置く「非居住者」に対しては、たとえばゼロ税率を提供していても、一般の「居住者」に対しては普通に課税し、地元経済とタックスヘイブンを完全に切り離しています。タックスヘイブンと地元経済を切り離し、一般の「居住者」に対して普通に課税するためには、「非居住者」に提供している税金逃れの情報を隠す必要があるのです。こうした税金逃れの情報を隠し、一般の居住者と非居住者を完全に分離しているということは、自分たちが行っているタックスヘイブンという税金逃れの提供自体がじつは害悪であるということを自分自身が暗黙のうちに認めているようなものです。「自由市場は透明でなければいけない」などと新自由主義者は言っていますが、究極の規制緩和とも言える規制逃れであるタックスヘイブンでは市場の透明性は確保されていないのです。タックスヘイブンは深い闇の中にあるのです。

 タックスヘイブンのイメージは、税金がゼロのケイマン諸島などマフィアとか富裕層の大物が金を保管する場所。グローバル経済の風変わりなおまけに過ぎないと一般市民は思っているかも知れません。(ケイマン諸島は世界第5位の金融センターで、8万社の企業がここに登記しており、世界のヘッジファンドの4分の3以上、および1兆9千億ドル(152兆円)の預金――ニューヨーク市の銀行の預金残高の4倍――がここに置かれています)

 しかし、タックスヘイブンは単なる「小さな島」での税金逃れなどではなく、じつはタックスヘイブンの歴史をよく調べてみると、グローバル化にともない1970年代から急速に拡大し、今や世界経済を動かす心臓部になっていることが分かります。
 世界の富の4分の1を呑み込む
タックスヘイブン

 現在、世界の貿易取引の半分以上が、タックスヘイブンを経由し、世界のすべての銀行資産の半分以上、および多国籍企業の海外直接投資の3分の1がタックスヘイブン経由で送金されています。

 また、富裕層がタックスヘイブンに保有している資産は2005年時点で11兆5,000億ドル(920兆円)に上り、これは世界の富の総額の4分の1に相当し、アメリカのGDP総額に匹敵します。この富裕層によるタックスヘイブンでの税金逃れは1年間で推定2,500億ドル(20兆円)に達し、この額は途上国の貧困に対処するための世界全体の援助予算の2倍から3倍に相当しているのです。

 ウォール街などの政治力と資金力を陰で支えるタックスヘイブンは「巨大企業の守られた聖域」です。一般に考えられているよりずっと大規模で重要な問題なのです。

 タックスヘイブンのシステムは、すべてにかかわる巨大な問題に広がっています。タックスヘイブンにより、アメリカでの納税逃れは年間で1千億ドル(8兆円)と言われていますが、それは問題の一面にすぎません。全貌はもっと大きく複雑です。
 税金と諸法制を国内外で「回避」する
システムとなり増殖するタックスヘイブン

 タックスヘイブンは、「小さな島」で税金逃れをするというだけの問題ではなく、金融規制や刑法を逃れるルートになり大きなシステムになっているということです。「回避」がキーワードです。国内の民主的な規則や規制が嫌なら外に出るまでだ。国内では許されないことができる場所に金を移す。他の場所へ「回避」していくというわけです。

 ウォール街の歴史をみると1946年のブレトンウッズ協定で国際協調によって資本の流れが厳しく管理されるようになり、富裕層は高い税金を払っていました。その後、25年ほどは資本の移動が厳重に制限されていたのです。世界的な高度経済成長の時代でしたが、金融業界はこうした制限に不満を持っていました。そこでロンドンに「回避」しました。英国銀行とシティが大歓迎してくれたからです。「金を持って来てくれるなら規制しません。何でもご自由に」ということで、1960年代以降ウォール街は大挙してロンドンに押し寄せました。ブレトンウッズ体制のほころびがここから始まります。海外に「回避」したウォール街はめざましい急成長を遂げます。ロンドンを皮切りに世界のタックスヘイブンを利用し、とてつもない急成長が可能になったのです。「大きすぎてつぶせない銀行」ができたのも、アメリカの銀行が海外に移り国内の規制を逃れて高リスクの事業で急成長したからです。今やウォール街は力を持ちすぎて国内の政治家ばかりか外国にも影響力をふるっています。

 イギリスも世界中にタックスヘイブンを持っています。ケイマン諸島やバミューダ諸島、ジブラルタルなどは「海外領土」。ジャージー島やガーンジー島などはイギリスの近隣にある「王室属領」です。すべてイギリスの支配下にありながら自治権も持つというタックスヘイブンをイギリスは世界中に持っています。このネットワークを通じてイギリスのシティに仕事が誘導されます。世界中のタックスヘイブンが仕事を集めてくるのです。カリブ諸島はアメリカや中南米の窓口です。合法・非合法混在のビジネスです。ガーンジー島などの王室属領は欧州やアフリカや中東の窓口で、ロンドンの金融街に仕事を回すのが役目です。タックスヘイブンの本格化は脱植民地化の時期と重なります。アメリカと同じくイギリスでも銀行が政治家の急所を押さえているのです。

 タックスヘイブンの多くは「合法」とされています。「租税回避」と「脱税」は違うというわけです。しかし、「租税回避」というのは「脱税」「違法行為」にはあたりませんが、本来の法律の趣旨にそむき、法律制定者の意図を裏切る行為です。

 現在の腐敗や経済危機などの問題は、タックスヘイブンが大きく絡みます。途上国の債務危機でもタックスヘイブンを通じて特権支配層が金を着服し巨額債務だけが国に残されました。最近の研究によれば、アフリカでは個人の私有財産が国の債務を大きく上回っています。その差額は個人資産としてタックスヘイブンの銀行口座にある。その金があれば十分に債務を返済できるのです。でも債務の負担は一般国民に回され、増税や公共サービスの縮小としてのしかかってくる。特権階級はおとがめなしで金はタックスヘイブンの安全な金庫に眠る。これが国の腐敗や民主主義の破壊につながっているのです。途上国の大きな不幸です。
 格差と貧困を増大させるタックスヘイブン
 タックスヘイブンのシステムはそれぞれの地域が他の地域に遅れを取らないように絶えず競争しています。それは税率を下げ、規制を緩和し、新しい秘密保護手段を編み出す競争です。その一方で、企業や富裕層、金融業者たちは、国内の政治家にタックスヘイブンを利用して脅しをかけます。「課税や規制を厳しくすれば、われわれはタックスヘイブンに行くぞ」と。国内の政治家たちは怖じ気づいて自国の税率を下げ、規制を緩和する。こうした流れで、次第に国内においてもタックスヘイブンのような特徴を帯びるようになってきており、国内の租税負担を「回避」できる企業や富裕層から、「回避」することなどできない一般市民の肩にだけ重い税金が移ってくるようになっているのです。実際に、アメリカの企業は1950年代には税総額の約5分の2を負担していましたが、その割合は今では5分の1に低下しています。富裕層においても、億万長者のウォーレン・バフェット氏が自ら証言しているように、富裕層の税金は受付係の社員より税金が下がっています。豊かな人々の払う税金額が減っているということは、その他の一般市民がその減少分を負担しなければならないということです。

 アメリカのシンクタンクが1月に発表したところでは、途上国から租税回避地や富裕国に2008年に1.2兆ドルが流れました。中南米の金は多くがアメリカに来ています。アメリカ自体も中南米のタックスヘイブンとして機能させているのです。タックスヘイブンの問題は2重の意味もあるのです。海外のタックスヘイブンに自国の税収を奪われる一方、アメリカは自国のタックスヘイブンの闇を外国人に提供し税逃れや犯罪を助けているのです。こうしたタックスヘイブンの闇のシステムが、有害な不動産バブルを生み、ウォール街の懐を肥やし、「大きすぎてつぶせない銀行」の問題や金融業界による「政治の乗っ取り」を招きました。アメリカには秘密資金の流出と流入の両方の問題があり、自国も途上国も傷つけ、腐敗させているのです。

 こうした問題を改善していくためには、タックスヘイブンの問題を、まず巨大で悪質なシステムだと多くの一般の人々に気づかせることが必要です。カリブの島のささいな脱税と思っているうちはダメです。

 ヨーロッパでもアメリカでも国の財政危機を理由に、社会保障の切り捨てや公共部門の人員削減、大量失業の嵐が吹き荒れています。財政危機の原因をつくった金融機関は公的資金で救済されて焼け太り、大企業も公共サービスを享受しながらタックスヘイブンを利用し法人税も減税させる。そのしわ寄せとして、社会保障削減と増税、公共サービスの切り捨てを受けるのは一般市民であるというタックスヘイブン問題の本質を広く伝えなければなりません。

(by文責ノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)