ダイベストメント(Divestment)とは、投資(Investment)の対義語で、すでに投資している
金融資産を引き揚げることを指します。ダイベストメントの形式には、持株の売却、自社事業
の売却の2つの方式があります。
今日ではそれに加え、融資の引き揚げや停止もダイベストメントに含まれると解釈されています。
ダイベストメントという言葉は、海外では以前から多く使われてきました。例えば、赤字事業の
売却。業績の悪い企業を自社から切り離し、自社の財務体質や企業価値を上げる方策として事業を
売却することは、海外では頻繁に実施されており、この行為はダイベストメントと呼ばれています。
また同様に、「選択と集中」という経営戦略を採る中で、ノンコア事業(企業の中核事業ではない
事業)を売却することも、同様にダイベストメントと呼ばれます。
日本で最近、「ダイベストメント」という言葉が使われ始めたのは、特別な事情があります。
それは、ここ数年海外で「化石燃料ダイベストメント」または「石炭ダイベストメント」という
活動が活発化してきたことが背景にあります。気候変動や二酸化炭素排出量の削減など環境課題
への関心が高まる中、それらが企業経営や企業価値に与える影響が認識されるようになってきました。
そこで誕生したのが座礁資産という考え方です。座礁資産では、将来資産価値が大きく毀損する資産
を問題視し、とりわけ座礁資産として認識され始めているのが化石燃料、特に石炭です。欧米では、
先んじてそれらの座礁資産からのダイベストメントするアクションが始まっています。
化石燃料ダイベストメントや石炭ダイベストメントの形式は複数あります。まずは、機関投資家
が座礁資産関連株を売却するというものです。座礁資産として認識され始めた石炭に関して、石炭採掘
企業や石炭火力発電企業、石炭火力発電設備開発企業の株式や社債の売却がそれに当たります。
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金融リスクと地球温暖化:ダイベストメントって何?@アースデイ東京2016“Be the Shift!”セッションズ(2016.04.24) 田畑守 2016/04/27 チャンネル登録 595
次に、企業自身のダイベストメントです。石炭火力発電企業が、石油や天然ガス、再生可能エネルギー
での発電方式に事業を変えていく行為や、親会社が石炭関連部門や石炭関連子会社を他社へ売却する
行為がこれに該当します。
そして、銀行が行うダイベストメントもあります。例えば、石炭関連企業への新規融資を停止したり、
石炭関連企業への融資借り換えを拒否したりというものです。
環境や社会観点からのダイベストメントは、石炭以外にも、タバコ産業、武器産業からの
ダイベストメントがあり、海外の大手年金基金では実施しているところが少なくありません。
また、イランやスーダン、イスラエルといった特定の国家の政策を問題視し、当該国国債や
企業からのダイベストメントも存在します。
英語ではダイベストメントの代わりに、Diventure、Disinvestmentという単語が用いられることもあります。
資撤退(ダイベストメント)とは、
投資(インベストメント)の逆 – つまり、非倫理的または道徳的に不確かだと
思われる株、債券、投資信託を手放すことを意味します。
あなたは、お金を投資する際、収益を生み出してくれる株や債券を購入したり、
その他の投資先に託したりするかもしれません。 大学や宗教団体、年金基金、
その他の機関も、組織の運用に役立てるため、このような投資に数十億ドル規模
の資金を託します。 ですが、化石燃料産業への投資は、投資家にとっても地球に
とってもリスクがあります。だからこそ、
私たちは、各機関に化石燃料関連企業からの投資撤退を呼びかけているのです。
比較的最近でも、わずかながら投資撤退キャンペーンの成功例があります。
ダルフールでの虐殺行為や、たばこ会社の広告、その他の課題を対象にした
キャンペーンが挙げられますが、最も大規模かつ影響力があったのは、南アフリカの
アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃を目的とした投資撤退キャンペーンです。
1980年代半ばまでに、全米有数の名門校も含めた大学155校が、南アフリカ政府と
取引のあった企業への投資から撤退しました。
また、米国26の州政府、22の群、全米最大の数都市を含む90都市が、南アフリカ政府
と取引のある多国籍企業への投資資金を引き上げました。
南アフリカを対象にした投資撤退キャンペーンは、アパルトヘイト政府を弱体化させ、
民主主義と平等の新たな時代を迎える後押しとなったのです。
化石燃料産業への投資撤退を行う事、気候危機に対する化石燃料産業の責任を追求する
ことになります。 同産業による極めて破壊的な影響を指摘し、気候変動が投げかける
倫理的問題に焦点を当てる — 私たちはこのような取り組みを通じ、化石燃料からの
投資撤退ムーブメントが、経済や政府に対して持つ化石燃料産業の影響力をなくす力と
なることを望んでいます。
What is fossil fuel divestment and why does it matter? | Keep it in the ground The Guardian 2015/03/23 チャンネル登録 82万
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The rise of divestments Fox Business 2018/02/27 チャンネル登録 50万
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Sustainable Japanを運営する当社(株式会社ニューラル)と、銀行の社会的格付を実施するFair Finance Guide Japan(FFGJ)は4月22日、海外主要銀行の「石炭ダイベストメント方針」をまとめた調査レポートを発表した。日本のメディアではあまり報道されていないが、昨年から世界大手の銀行が相次いで石炭産業からの投融資引き揚げ(ダイベストメント)を実施している。今回、米国Bank of America、Morgan Stanley、Wells Fargo、英国HSBC、フランスBNP Paribasを取り上げ、具体的な規制内容やその経緯を分析した。
【報告書】海外主要銀行の「石炭ダイベストメント方針」調査レポート
石炭産業は昨今の資源価格の下降もあり、事業採算性が大きく悪化している上、昨年12月の気候変動枠組み条約パリ会議(COP21)で二酸化炭素排出削減に関する国際合意に至ったこともあり、投資対象として適格性を大きく下げている。ダイベストメントを実施ている銀行各社のポリシーの中身には差異はあるが、ダイベストメントを単なる環境政策やCSRという観点だけでなく、財務リターンの側面からもダイベストメントを実施しているという共通点がある。ダイベストメントの範囲を、石炭採掘だけに留めるか、石炭火力発電にも広げるかの判断は、銀行ごとに違いがある。
パリ会議以降、直接金融を扱うファンドやアセットマネージャー、間接金融を扱う銀行とともに、欧米では金融機関全体で気候変動問題に対する関心が著しく高まっている。中国でも同様に石炭産業に対して金融機関のアセスメントを強めるよう行政指令が出ている。一方で、日本の主力銀行の中で石炭ダイベストメントを発表したところはまだない。むしろ、日本政府は今でも石炭火力発電を推進しようとしている。投資適格性の観点からも、長期的に石炭への投資が有効なのかどうか、再度検討する必要がありそうだ。
【企業サイト】Sustainable Japan
【企業サイト】ニューラル
【団体サイト】Fair Finance Guide Japan