さて 世界の台風の目。中国は シルクロード 一帯一路構想で 海外にどんどん
進出している。発展途上国は お金が入ってくるとのことで 喜んで迎え入れて
いるように見える。 実態は どうなのだろうか? 今日は 日曜日 時間が
あれば この問題をしっかり もう一度識者の声を聴いてみよう。
本書は今日の中国の外交・経済財政政策を理解する上で必読の一冊だ。今後、歴史に残るであろう
中国の壮大な構想と、その背後にある哲学を理解することができ、また、この構想がアジア域内に
もたらす波紋をあたかも現場にいるかのように感じることができる。中国の壮大なビジョンを理解
する上で不可欠なガイド本といえよう。
① この中国の壮大な構想こそが『一帯一路』または『新シルクロード』と呼ばれる政策だ。これは
2014年に習近平総書記が提唱した経済圏構想で、中国がアジアとその先に広がる地域との連携強化
を目指した二つのプロジェクトから成り立っている。中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパ
につながる「シルクロード経済ベルト」と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島
の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」。
② いずれも、陸上と海上の双方で産業ベルト・貿易ルートを構築しようとする壮大な試みである。
『一帯一路』といえば一般的には中国の外交政策として認知されているが、国内政策や経済・
財政政策としての一面も実は大きい。最近でも、米中貿易戦争による経済的ダメージを軽減す
るため、『一帯一路』に沿った積極的な経済・財政政策が活用されている。中国共産党は、
景気浮揚策として、発展が遅れている国内地域への積極的な公共投資を2018年7月31日の中央政治
局会議にて決めたが、投資の向け先の多くは『一帯一路』で今後カギとなる国境拠点にむけら
れる予定だ。
③ このように、中国の外交・経済財政政策を理解する上で『一帯一路』構想を抜きには語れなく
なってきているのが現状だ。この構想が成功するか失敗するかについて著者はあえて予言して
いないが、これが習近平の名声を後世に残すために考案された政策とは断言する。習近平総書記
が乾坤一擲で推進する政策であり、失敗は許されない。
④ 本書では、習近平肝いり政策がどのような意図でかつどのように進められているかを現場
からのルポタージュという形式で描写している。各地での点としてのストーリーが『一帯一路』
という大きな幹に繋がっていくのが本書の構成だ。
⑤ ではアジアインフラ投資銀行(AIIB)のような多国籍金融システムを通して日米主導
のアジア金融システムに風穴をあけていく様が描かれる。アメリカや日本はこのAIIBがブレトン
・ウッズ体制を代替することを意図していると警戒するが、著者はAIIBの融資規模からして
それは過大評価と評す。AIIBはあくまでもアピール用の金融機関でしかないとする。
⑥ それよりも、圧倒的にAIIBよりも融資規模の大きい中国輸出入銀行(Exin Bank)や国家開発
銀行(CDB)などが、実質的に中国の海外進出を後押しする機関であると説く。中国輸出入銀行
単独の貸出額だけで世界銀行含む主要国際開発銀行七行の貸出額合計よりも多く、
この銀行を主軸に中国はアジアのインフラ軍拡競争を勝ち抜こうとしていると分析する。
これら銀行抜きには中国政府の意図は読み取れない。
⑦ 第二章と第三章では、ロシアの影響力強い中央アジアや、日本のプレゼンス高い東南アジア
への積極的なインフラ投資によって、それら国々の経済・文化圏を徐々に変えていく様子が
描写されている。中国は自国国境地域である新疆のウルムチやカシュガル、雲南省の昆明や
景洪などを貿易拠点とし、次々と道路・鉄道・石油ガスパイプラインを外に向けて敷設して
いき、周辺諸国の街並みを変えていく。
⑧ 中国による投資によって周辺諸国は良くも悪くも近代化を遂げていき、否が応でも中国に
つながる道が切り開かれていくのだ。いずれの国々も覇権広げる中国を警戒視しながらも、
『一帯一路』プロジェクトがもたらす投資資金というニンジンの前では政治的バランスを
とるのが難しくなってきている。
⑨ そんな『一帯一路』構想も成功ばかりではない。ミャンマーやスリランカによる反旗
やベトナムを中心とする一部ASEAN諸国が中国への敵対感情からアメリカへのすり寄り
も許している。第四章から第六章のストーリーは、中国の思惑が一筋縄ではいかないこ
とを物語っている。
⑤ この『一帯一路』構想を通して中国が目指すのは、中国の資金源を潤滑油とした非公式
な同盟ネットワークの構築である。ハードインフラへの投資を軸に自国経済の繁栄と域内
での地位確保を目指しており、究極的にはかつての朝貢制度を創出することを目論んでい
ると著者は分析する。
⑥ 数十年後のアジアがどうなっているか楽しみだ。アメリカを軸とした経済・安全保障体制
が維持され続けるのか、それとも中国による地域秩序が構築されているのか。いずれにせよ、
中国による『一帯一路』構想は大きなうねりを今後も起こしていくことは間違いない。
⑦ このうねりを理解するのとしないのでは、歴史を理解する上でもビジネスを進める上でも
雲泥の差を生むことになるだろう。『一帯一路』が悪名高い大躍進政策の二の舞となるのか、
はたまた中国経済と地域秩序を変える政策になるのか、同じ時代に生きるものとして目が
離せない歴史のうねりである。
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