日本にもくる?欧米でブーム「ヒュッゲ」とは デンマーク流の癒やし時間に皆夢中。The New York Times
パチパチと音を立てる暖炉を囲みながら、手編みの靴下やセーターを着込んだ友達や家族が、コーヒーやケーキを食べてほっこりする時間――。ヒュッゲはデンマーク人がアイデンティティ並みに重視するコンセプトだ。
それが最近、デンマーク以外の国で「ヒュッゲを見習おう」という動きが表れている。すでに英国では、昨年半ばからちょっとしたヒュッゲブームが起きている。コリンズ英語辞典は「ブレグジット(イギリスのEU離脱)」や「トランピズム(トランプ主義)」と並んで、ヒュッゲを2016年に最も話題になった単語トップ10に含めた。
Forget Your Troubles, Come On, Get Hygge Danes are the happiest people in the world. They say they get there with hygge – coziness. We’ll ask how that works.
常にヒュッゲを意識する生活
デンマークはよく、スウェーデンやノルウェーといった近隣国を制して、「世界で最も幸せな国」にランクインされる(ちなみに国連の調べではアメリカは13位)。この北欧3カ国はいずれも人口が少なく、教育が無料で、政府がチャイルドケアに補助金を出すなど社会サービスが充実しているという共通点がある。そんななかヒュッゲは、「デンマークらしさ」を示す重要な要素だ。
少なくとも、マイク・バイキングはそう考えている。コペンハーゲンのシンクタンク「ハッピネス研究所」の創設者でCEOのバイキングは、「しょっちゅう(ヒュッゲのことを)話題にしている」と語る。
「あなたをディナーにご招待しましょう。その日までの間、私たちはそれがどんなにヒュッゲリ(ヒュッゲの形容詞)なひと時になるか話し、当日はとてもヒュッゲリなディナーだと語り合い、翌週はこの前の土曜日がいかにヒュッゲリな1日だったか話すのです」
「デンマーク人にとって、ヒュッゲは文化の一部。米国人が自由を持って生まれたコンセプトと考えるのと似ています」。
バイキングはちょうど、著書『リトル・ブック・オブ・ヒュッゲ(The Little Book of Hygge)』の宣伝のために数カ国を回る旅から戻ったところだった。この本はすでに英国でベストセラーになっており、米国でもこの1月に発売になる。いまやひとつのジャンルになった「ヒュッゲ本」の中でも、最も魅力的な1冊かもしれない。
Mariana Atencio is a Peabody Award-winning journalist, currently a national correspondent for NBC News and MSNBC. The Huffington Post called her ‘our Latina Christiane Amanpour’ and Jorge Ramos wrote: ‘Mariana is the next-gen voice for Latinos breaking all barriers.’ Mariana is known for combining in-studio work and high profile interviews like Pope Francis, with tenacious field reporting all over the world, covering youth-led protests in places like Ferguson, Mexico, Haiti and Hong Kong.
2017/02/02 に公開
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The Year of Hygge, the Danish Obsession with Getting Cozy 今年はHyggeの年。居心地よさを求めるデンマーク人のこだわり。ノルウェー時代の暖炉の薪の火を思いだす。
セレブなヘルシーブームへの反動?
ブリッツは、「ヒュッゲは見せかけでなく、花の命のようにはかないものだ」と説く。それを聞いて納得する読者もいるだろうし、思わずプッと吹き出してしまう読者もいるかもしれない。実際、ヒュッゲブームが起きている英国では、それをおちょくる論調も少なくない。
ジャーナリストのジョン・クレースはガーディアン紙で、『リトル・ブック・オブ・ヒュッゲ』にうっとりするような人間は、いいカモだと評している。「デンマーク人がよその国の人よりもずっとハッピーなのは、あの国ではやることがものすごく少ないからだ。何事に対しても期待が極めて低いぶん、喜びが大きい」
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の男性ファッションエディターのジェイコブ・ギャラガー最近、「ヒュッゲは2016年版の『わび・さび』だ」とツイートしている。
TEDxNCSU – Jeffrey Huber – The Danes: What We Can Learn from the Happiest People On Earth
ではなぜ今、ヒュッゲがウケているのか。広告代理店ジェイ・ウォルター・トンプソンの未来研究者ルーシー・グリーンは、「ウェルビーイング・ブーム」への反動だと分析する。1着100ドルもするレギンスや、1杯10ドルもするジュースクレンズに代表されるエリート主義的なライフスタイルに、人々は嫌気が差してきたというのだ。
Forget Your Troubles, Come On, Get Hygge Danes are the happiest people in the world. They say they get there with hygge – coziness. We’ll ask how that works.
「ヒュッゲはもっと個人的な経験で、手軽に取り入れることができる」とグリーンは語る。「ヒュッゲは『形から入る』ものではなく、暮らしの味わいを重視する。それが冬が長く暗い国から来たのは驚きではない。それが先行き不透明な現代にぴったりマッチしている」。
だからといって、ヒュッゲブームが小売り業界に与える影響がゼロというわけではない。「繊維製品や家庭用品にはヒュッゲブームが来るだろう」とグリーンは予測する。「手頃な価格のカシミアやキャンドルまで幅広いはず。1990年代のマイホームブームに似たものになるだろう」。
(執筆:Penelope Green記者、翻訳:藤原朝子) © 2016 New York Times News Service
Read An Excerpt Of “The Little Book Of Hygge” By Meik Viking
実際、昨年は20冊以上のヒュッゲ本が刊行された。とはいえ、まだ整とんブームの近藤麻理恵ほどの「教祖」的存在は生まれていない。いや、もしかすると、「このブームで一番の有名人」という考え方自体が、ヒュッゲのコンセプトに反するのかもしれない。
今年もヒュッゲ本の刊行は目白押しだ。1月はほかにもノルウェー人女性シェフでフードライターのシンヌ・ヨハンセン著『ハウ・トゥ・ヒュッゲ――北欧流ハッピーライフの秘密(How to Hygge: The Nordic Secrets to a Happy Life)』が刊行される。2月には、ヒュッゲ・ドットコムというウェブサイトでデンマーク家具を販売するルイーザ・トムセン・ブリッツ著『ブック・オブ・ヒュッゲ――デンマーク流の満足、快適、つながりのアート(The Book of Hygge: The Danish Art of Contentment, Comfort and Connection)』が刊行される。
「風水ブームを思い起こさせる」と、ハーパーコリンズ社のエグゼクティブエディターのキャシー・ジョーンズは言う。「どこか馴染みがあるけれど、新鮮に感じられるものをよその文化に見出そうという試みだ」。
外食でなく家で家族や友達とあったまる
英ガーディアン紙のパトリック・キングズレーは、2012年の著書『デンマーク人になる方法(How to Be Danish)』で、デンマークではあらゆることがヒュッゲになると書いている。自分の自転車もヒュッゲリ、誰かのテーブルセッティングもヒュッゲリ、コペンハーゲンのお洒落な地区ヴェスタブロを散策するのもヒュッゲリだ。
……で、要するにどうすればヒュッゲな暮らしができるのか。それにはまず、うちに帰って「巣ごもり」すること。ヒュッゲクログ(人目につかない隠れ家)ならなおよい。それから毛布にくるまってソファに座り、友達とコーヒーを飲みながら、連続殺人事件の特集番組を見る。
デンマーク人が巣ごもりを芸術の域に高めた一因は、外食が非常に高くつくからだろうと、キングズレーは著書で推測している(デンマークではレストランで食事をすると、25%の付加価値税がかかる)。
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New York Times: Move Over, Marie Kondo: Make Room for the Hygge Hordes — “Denmark frequently tops lists of the happiest countries in the world, in surveys conducted by the United Nations, among other organizations, consistently beating its Scandinavian cousins, Sweden and Norway — as well as the United States, which hovers around 13th place. While all three Nordic countries share happiness boosters like small populations and the attendant boons of a welfare state (free education, subsidized child care and other generous social supports), what distinguishes Denmark is its quest for hygge.”
おどろおどろしいテレビ番組や、嵐などの荒天は「ヒュッゲ度」を高める効果があると、バイキングは語る。彼の著書によると、デンマークの1年間の平均降雨日数は179日。そんななか温かい部屋で過ごすほっこりした時間は、極上のヒュッゲだ。
シェフのヨハンセンは著書『ハウ・トゥ・ヒュッゲ』で、ヒュッゲなレシピを紹介する。グロッグ(ホットワイン)やミューズリー、フルーツコンポート、塩漬け干しダラのフリット、子羊のローストなど、彼女が現代的にアレンジした北欧料理がずらりと並ぶ。
一方、ブリッツの『ブック・オブ・ヒュッゲ』は、インテリアでも料理でもなく、マインドセットとしてのヒュッゲを説く。それは木の椀のぬくもりやビンテージの織物を愛でることであり、恋人と一緒に歯磨きをしたり、全裸で時間を過ごしたりすることであり、吊り下げの照明具、丸テーブル、焦げた木ベラ、古い靴、ガチョウの鳴き声、洗いたてのシワの入ったシャツにヒュッゲを見出す。
New Yorker: The Year Of Hygge, The Danish Obsession With Getting Cozy — “Winter is the most hygge time of year. It is candles, nubby woolens, shearling slippers, woven textiles, pastries, blond wood, sheepskin rugs, lattes with milk-foam hearts, and a warm fireplace. Hyggecan be used as a noun, adjective, verb, or compound noun, like hyggebukser, otherwise known as that shlubby pair of pants you would never wear in public but secretly treasure. Hygge can be found in a bakery and in the dry heat of a sauna in winter, surrounded by your naked neighbors.”
The Guardian: The Hygge Conspiracy — “But for all the earnest cultural analyses, linguistic glosses and quotations from Kierkegaard, it is the images, more or less common in style to each title, that one falls for: hands cupping warm mugs; bicycles leaning against walls; sheepskin rugs thrown over chairs; candles and bonfires; summer picnics; trays of fresh-baked buns. To look at them is to long for that life, that warmth, that peace, that stability – for that idealized, Instagrammable Denmark of the imagination.”