種が危ない。野口勲さん John Mooreさん 171028(Sun)

▲野口勲さんのご本「タネが危ない」を山田正彦先生のオフィスで見つけたら1冊提供してくれた。とても 有意義な素晴らしいご本で、嘉右衛門食堂本店@浅草でも置いてあった。ベストセラーなのだと思う。読み進めるうちに、幾つかの「なぜ?」の回答を見つけた。同い年の野口さんの人生は 素晴らしいものだと 身の引き締まる思いがした。幾つかは 次の記事にも 現れている。あ~しあわせ。

(★次の番組の★1時間10分★を過ぎたところから★野口さんご登場)F1=

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111.野口さんへのインタビュー:(記事を見つけました。感謝)タネが危ない!わたしたちは「子孫を残せない野菜」を食べている。~野口のタネ店主 野口勲さん

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●世界の人口が70億人を超え、膨大な人口を限られた資源で支えるためにさまざまな品種改良や農薬や化学肥料の開発、生産方法の開発が行われてきました。その究極とも言えるのが作物の遺伝子や種子に手を加えること。

いま世界の農家で使われているほとんどのタネが「F1」と呼ばれる一世代限りしか使えないタネ。そしてF1の中でもオシベがない「雄性不稔」と呼ばれる、生物学的には異常なタネが増えていると言います。

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▲ John Mooreさんのビデオ

▲Saving the Heritage Heirloom Seeds with John Moore from Seeds of Life Japan 最近仲良くなったジョンさんはフランスで農場を、買取り固定種タネの保存場を作られた。

Aspeer is a platform dedicated to sharing sustainable and tangible initiatives favouring a transition towards a new model of society. A model reconciling the social, environmental and economic issues.

Pure Pollination Heirloom Seeds Review

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●食糧生産の効率化のために増え続けるF1のタネ、その一方で私たちの食の安心や安全への意識は高まっています。このジレンマをどのように解決すればよいのか。著書や講演でF1種子の危険性を訴え、在来のタネを守る活動を広めている「野口のタネ」店主、野口勲さんにお話をお聞きました。

●野口のタネ・野口種苗研究所代表 野口勲さん 1944年生まれ。

全国の在来種・固定種の野菜のタネを取り扱う種苗店を親子3代にわたり、埼玉県飯能市にて経営。伝統野菜消滅の危機を感じ、固定種のインターネット通販を行うとともに、全国各地で講演を行う。

●著書に「いのちの種を未来に」「タネが危ない」、共著に「固定種野菜の種と育て方」等。
家業を継ぐ前には、漫画家・手塚治虫氏の「火の鳥」初代担当編集者をつとめた経歴を持つ。

 ●野口のタネ・野口種苗研究所(http://noguchiseed.com/
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▲(右前・山田正彦先生 奥・佐々木重人氏 左前・山元 奥・山田君)

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●おいしさの8割はタネで決まる

現代の農業では、おなじ規格のものを大量に作ることが農家に求められています。そして、規格通りの野菜を作るためには「F1」のタネを使わなければならない「F1(雑種第一世代)」のタネから育った野菜は、みんな同じ成育のしかたをし、型にはまったようなかたちになり、そして同じ時期に収穫できます。つまり、出荷しやすく、売りやすいということです。

一方で「在来種」や「固定種」と呼ばれる、昔から使われているタネは一粒一粒に特徴があり、多様性があり、早く育つものもあれば遅く育つものもある。葉の形を見たり、成育の状況を見ながら、大きくなったものから収穫します。一度タネをまけば長い間収穫できますが、需要に合わせてまとまった量を定期的に出荷することができないから、お金にするのは難しい。でも味も昔の野菜そのままで美味しいので家庭菜園に向いています。そして、いくら無農薬や有機肥料で育てても、味を決める8割はタネ、本当に昔ながらの美味しい野菜を食べたいなら在来種を自分で育てるしかありません。

●だから私は家庭菜園のタネの店として在来種や固定種を売っていて、買う人もほとんど個人の方です。あくまでもタネを売る店で、育てるのはお客さんなんですね。講演会をやると7割以上の人が30代〜40代の女性ですが、質疑応答の時間になって必ず最初に受ける質問は「そんな野菜はどこで買えるんですか?」と。だから私は毎回「買えません、自分で育ててください。」と言うんです。実際、固定種の栽培は都内でやるほうが向いています。

なぜかというと日本の野菜はアブラナ科のものが多くて、かぶ、なっぱ、大根など交雑しやすいんですね。自家採種、自分でタネ取りするためには混ざりやすい野菜から隔絶した場所でやらなければならない。都内は畑がないから種採りするのがラクなんですよ、そばに同じような野菜がないから。そもそも、最近のF1野菜は花粉ができないから交雑しない、種を汚染しないのですが。タネ取りを都内の庭や畑でやるのはオススメできます。

●ただ、F1野菜はいまの社会に必要なんですよ。昔は日本の8割の人がなんらかの農業をやっていました。お侍だって自分の畑を耕して野菜を育てていました。それがどんどん工業化が進み、高度成長期になると農村部に残って食べ物を育てる人が少なくなった。いまの日本では、215万軒(H27時点、農水省統計)の農家が1億2000万人の食べ物を作っているわけです。だから効率が良くないといけないし、周年栽培(1年中栽培すること)して供給しなければならない、だから社会全体の食の需要を賄うにはF1のタネが必要なんです。

●ただ、そのF1の作りかたにもいろいろあって、人工授粉でやっていた時代や、アブラナ科の自家不和合性(自家受粉しない性質)を利用してやったり、自然の植物が持つ特性を活かして作られるF1に対しては、私も反対なんてしてなかったのですが。
いま、どんどん雄性不稔」というオシベを持たない異常な株を利用して作られたタネが増えて、花粉ができない、子孫ができない、そういう野菜が増え続けていて、これが危険なのではないかと訴えている、危惧しているんです。

●オシベがない、タネができない「雄性不稔」

雄性不稔を使ったF1の技術はアメリカでできたもので、それがいま世界標準になっています。もともと日本にあったF1のタネはアブラナ科の野菜から作られていました。しかしアブラナ科の野菜は海外にほとんどないんです。菜っ葉なんて食べているのは日本、韓国、中国くらい、欧米ではあまり食べないんです。

日本独特のF1技術というのが自家不和合性というもので、これを日本で採種していたときはよかったんだけど、タネ取りをする農家がいなくなって、F1の需要が増えて、それだけの量を日本で生産するにはコストが見合わなくなった。

だから父親と母親のタネの原種を渡して、採種をほとんど海外に任せるようになった。でも海外では母親を雄性不稔にして花粉のでない株をつくり、それを使ってタネを作るようになった。いま日本のタネがどんどん雄性不稔に変えられているんです。日本人の主要な食べ物である菜っ葉などが雄性不稔になって、それを日本人が食べるということ。だから私はいま危機感でいっぱいなんです。

雄性不稔の野菜かどうか、スーパーに並んでいるものを見てもわかりませんが、花を咲かせればすぐにわかります。試しに、スーパーで売っている大根やニンジン、タマネギなんかを庭に植えてみてください。やがて花が咲きますが、その花の先を虫眼鏡でよく見るとオシベがありませんから。オシベがない野菜ばかりになってるんです。つまり子孫を残せない野菜ばかりを食べてるんです、私たちは。それは危険なんじゃないのかと。でも誰もそんなこと知らないし、知ってるのはタネ屋だけだけど、タネ屋はそんなこと何も言わない。だからだれも知らないんです。

もし私が死んで、こういう固定種や在来種のタネを扱う店がなくなってしまったら、もうどこにもなくなってしまう。だから今のうちに私のところからタネを買って、自分で育てて、それを子孫に繋いでくれ、と言って回ってるんです。

 

誰もタネを採らなくなった

▲遺伝子組み換え食品 国を滅ぼす中国通視聴 11,226 回2011/05/02 公開

【新唐人2011年5月2日付ニュース】最近、国際環境保護団体のグリーンピースは中国産ベビーフードから遺伝子組み換え成分を検出したと発表。中国では遺伝子組み換え米の商業栽培が政府から推奨されていますが、遺伝子組み換え食品は人体に影響はないのでしょうか。中国の国民はどう思っているのでしょうか。

いまうちで販売しているタネも、どんどん種類が減ってきています。日本の菜っ葉は交雑しやすいので、すべてのタネを一カ所で自家採種することは難しい。例えばうちはカブのタネを採ってるんですが、カブをやると菜っ葉のタネは取れないんです。みんな交雑しておかしくなっちゃうから。菜っ葉の下がカブになってしまったり、カブの葉っぱが小松菜になっちゃったり白菜になっちゃったりするから。だからカブ以外のタネは他所から買うしかないんです。だからどんどん減ってるんです。

タネを採る人がいなくなったから、タネもなくなってきているんです。タネは採るものじゃなくて買うものだという時代になってしまったから。いまタネ採りの仕方を知っている農家は、80~90歳くらいの人だけ。その下の世代の50~60代の人たちはタネを採るなんて面倒くさい、それよりも買った方が安いし楽だしお金になる野菜ができると考えています。

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モンサント : 遺伝子組み換え有毒作物・・・Democracy Now! iidesan1  iidesan12,400 視聴回数 13,039 回 2011/06/24 に公開

詳細は デモクラシー・ナウ! WikiLeaks: モンサントの遺伝子組み換え作物を拒む欧州に米国が報復を検討 http://democracynow.jp/video/20101223… 字幕翻訳:小椋優子/校正:桜井まり子 全体監修:中野真紀子/サイト作成:桜井まり子

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●タネを採るためには9月にタネをまいて、12月にだいたい野菜ができる。そのなかからいいものを選んでもう一度植えて、そして3〜4月に花が咲いて そのタネを採れるのが7月になる。一枚の畑をそれだけの期間占領してしまうんです。でも今の農業は同じ畑をいかに回転させて効率よくお金にするかという農業だから、半年以上ムダなことに畑を使うなんてもったいないという考えなんですね。

だから僕の話を聞いたり本を読んだ人から「種採りをしたいんですけど、どうすればよいですか? 採るのは難しいですよね?」とよく訊かれるんですが、難しいことなんてないんです。植物は人間に食べられるためじゃなくて、自分の子孫を残すために生きてるんだから、ほっとけばみんなタネになるんです。

昔は世界中の何億人という農民がみんなやってきたことなんです。それが昭和30年代後半くらいからF1のタネができて、形のいい揃いのいい市場で売れやすい野菜ができるというので農家がみんなよろこんで買って、そしてタネを自分で採ってみた。すると先祖帰りしてしまって、次の代ではめちゃくちゃなものしかできないということがわかった。そこからタネはもう採るもんじゃない、買うもんだ、ということになってしまった。昭和50年代くらいからタネ採りをする農家はなくなってしまいました。

怒り】TPP加盟すると遺伝子組み換え食品しか食べられなくなるaikoku369az 視聴 9,054 回 2012/01/29 公開

●日本のタネは外国製?

大手の種苗会社はF1か雄性不稔か自家不和合性かなんて言う必要がないから自分からは言わない。雄性不稔か自家不和合性かなんて訊いても絶対に教えてくれない。JAで売られているのもほとんどF1で、しかも古いタネです。そして、いまのF1のタネはほとんど海外採種になってしまいました。海外から入るF1のタネと国内で採る固定種のタネの値はそんなに変わらない。海外の方が安く入る場合もあります。

昔は海外の種採りメーカーも、1エーカー作らせてくれたら何でも採りますよ、ぜひ依頼してくださいと言ってたのが、いまでは5エーカー作らせてくれないと採ってやらないぞ、ということになってきて、5エーカーというと2町歩、2ヘクタールのタネというと何トンもの量になる。それが海外でできると、アメリカやイタリアなどの北半球では日本と同じように7月ころにタネが実って、それが船に乗って日本の神戸か横浜について、港の植物検疫所で菌や虫の卵が付いていないか検査されて、そのあと日本の種苗会社に入ってくるわけです。

●昔の種苗法という法律では、採取年月を表示する義務があったんですが、海外採種のタネが日本に入ってくる頃には蒔き時を過ぎるので、古いタネを次のシーズンに売ることになってしまう。そこで農水省と大手種苗会社で相談をして、最終発芽試験から1年間有効という表示に法律を変えてしまった。そのために、何トンというタネが、採取から半年後に日本に入ってきて、農水省が何億もの補助金を出して作った種子貯蔵庫に保管する。

その中に入っている限り発芽率は落ちないという前提で、温度は15℃以下で湿度が30%以下、タネの保存に最適な環境を作り出す。タネは呼吸しているから、梅雨時から真夏にかけて呼吸作用が増えて体力を消耗して、夏を過ぎるころにはガクンと発芽率が落ちてしまう。ところが、湿度温度が一定のところで保管すると発芽率はそんなに落ちない、5年経っても10年経っても。農水書の決めた標準発芽率をクリアしている限り、いつでも新しいタネとして売ることできるんです。

(タマネギの種畑)

●「タネなし」を好む現代人

うちのお客さんは大きく二つのピークがあって、ひとつは70代から80代の方。会社を定年退職して、いままではスーパーで買っていた野菜はどうも美味しくないから、自分で有機栽培して、昔に食べたおいしい野菜を食べたいと思って栽培を始めたけどどうも昔の味にならない。理由を調べると、やっとタネが違うからだということに気が付いて、うちから買うようになった人たち。もう一つは30代から40代の方で、子供が生まれて、健康に育てたいという人たち。その間のお金を稼ぎたい年代の人たちは一切興味がない。

いまの人の「美味しい」は、甘くて柔らかいもの、生で食べられるもの。昔の大根なんて堅くて辛い。なぜかというと細胞のひとつ一つが緊密で均一だから。F1だと固定種で3〜4ヶ月かかるところを2ヶ月で収穫してしまう。2ヶ月で成育するということは、細胞が水ぶくれのようにフニャフニャで、その細胞を維持するために細胞壁が強くなって根が崩れるのを防ぐ。だからいまの大根を大根おろしすると水分でペチャペチャものが出てきて、おろし金の方には繊維が残って付いている。昔の大根をおろすと均質なものになります。いまの大根はすぐに煮えますが、昔の大根は時間をかけると辛みが甘味にかわる、味も全然違うんです。

いまの子供はトマトにタネがあるのも嫌がるという。タネがないものがおいしい野菜なんです。子供がよろこぶからという理由で、トマトまで雄性不稔になっています。本来植物は人間に食べられるために生きてるんじゃない、タネをつくって子孫を残すために生きている。そのタネを邪魔だというような世の中になってしまったんですね。

 ●植物以外にも広がる「雄性不稔」

クロレラ工業という会社が私の講演会を主催してくれたのですが、彼らから面白い話を聞きました。種無しぶどうは花が咲いたらジベレリンという植物ホルモンにどぶ漬けして、ホルモン異常を起こすことでタネをできなくするのですが、その種無しぶどうにクロレラを散布するとタネが復活するというんです。要するにクロレラの持っているミトコンドリアがタネをつくれるように修復するんだね。雄性不稔もミトコンドリア異常によって起こるものなので、ミトコンドリアの力が強いタネのちゃんとした野菜を食べていたら、人間の無精子症のようなことにも効くのかもしれないと思っています、まだ証明されたわけじゃないのですが。

関連する話で、世界的にアメリカで特に問題になったミツバチの大量死の問題があります。原因はネオニコチノイドを使った農薬だと言われていますが、他に原因があるのではないかと私は思っています。日本で起きたケースでは、蜂の死骸が巣箱のまわりに積み上がっていて、ネオニコチノイド農薬をなめた蜂が巣箱に帰るまでにバタバタと倒れたということが想像できますが、アメリカのケースでは「いないいない病」と言われていて、死骸がどこにもない。昨日まで大量にいた蜂が突然巣箱から消えた。

これが2006年から2007年に起こって、全米で飼われていた240万箱のミツバチの巣箱のうち、3分の1の巣箱が空になってしまった。養蜂家で生物学者の方によると、これに似た現象が20年に一度づつ繰り返し起きているという。ということは1990年代に住友化学が作ったネオニコチノイドが原因ではないことになる。

●(ミトコンドリア)

●1960年代に初めて起き、そこから20年前に何らかの原因が作られたと考えると、1940年代、まさにその時に世界で初めて雄性不稔、つまりミトコンドリア異常のタマネギのタネが売り出された年なんです。雄性不稔の母親に対して、オシベのある父親を3:1で植え付けて、雄性不稔のF1種を大量生産するのですが、その受粉にミツバチが使われているんです。

女王蜂は2年生きるのですが、全部メスの働き蜂と雄蜂は1年しか生きない。雄蜂は精子を提供するだけの目的で、女王蜂に精子を出した瞬間に即死します。巣箱に残っているオスは、自分ではエサをとる事のできない、なまけものの「ドローン」のオス蜂なんです。これが秋になって冬が近づいて花がなくなると、メスの働き蜂から巣箱を追い出されてしまう。自分で蜜をとる方法を知らないオス蜂は、そのままのたれ死にする。

冬になると巣箱の中は何万の働き蜂と女王蜂、メスだけになる。2月くらいになって花が咲き始めると、働き蜂の偵察隊が外へ出て行って最初にとった蜜をローヤルゼリーにして2年目の女王蜂に与える。女王蜂はその刺激で卵管が開いて、また卵を産み始める。そこで生まれた卵が次の女王蜂と、雄蜂と働き蜂になる。

●2006年から2007年にかけて蜂がいなくなったということは、冬から春になる時期というのは、メスだけのコロニーになった巣箱に、待望の雄蜂が生まれたときなんですね。20年に1度起こるという事は、女王蜂でいうと10世代。この間で女王蜂に蓄積された何かが原因で、10世代目の女王蜂が生んだ雄蜂が、無精子証になって生まれたんじゃないか、もしそうだとしたら、もうその巣箱には未来がない。

ミツバチというのは500万年前に進化が止まっていて、その間ずっと同じ事をやってきた。しかし20年に1度づつ、何が起こったかわからないけど、精子を持たないオスが生まれてしまった、巣の未来がなくなった。種を残すというアイデンティティを失ったメスのミツバチたちが未来に絶望してどこかへ飛んで行ってしまった、そういうことが起こったのではないか、というのが僕の仮説です。こんなことを言ってるのは世界中で僕一人なんですが…。

●人間のタネは大丈夫か?

これは人間にも起こりうる話で、精子の数というのは1940年代に最初の統計があるのですが、この時期に人間の精子1cc(ml)あたり平均1億5000万いたそうです。しかし、いまは4000万、しかも年々減り続けています。これが2000万以下になると、無精子症と呼ばれるレベルで、性交しても自然には受精させることができない。

無精子症はミトコンドリアの異常で、精子の尻尾の付け根にはミトコンドリアが棲んでいて、尻尾を振るエネルギーをミトコンドリアが作っている。これによって精子は自分で卵子に向かっていく。この運動量、睾丸で生まれて卵子に辿り着くまで、人間のスケールに直すと100km、だいたいマラソンを2回走るくらいのエネルギーを尻尾の付け根にいる100匹くらいのミトコンドリアが生んでいるんです。

●そのミトコンドリアの力が弱くなってる、精子が泳ぐ事もできなくなってる。いまの人間の精子を顕微鏡で見るとノタノタしていますね。牛の精子を選んで人工授精をしている人によると、人間の精子なんてもうほとんどが牛だったら使えないレベルだそうです。これは食べ物からきてるんじゃないでしょうか?

もともと動物は脳を持っていなくて腸で全て判断していました。だからクラゲのような腔腸動物には脳がなくて、腸がその役割をしています。食べたものを腸で判断して、その中で大事なものを次世代に残すために生殖器官へ渡す。人間の精巣や卵巣が変化しているのも食べたもののミトコンドリアに原因があるのではないのかと思っているんです。動物が最初に目を持ったのは、腔腸動物のような生き物が植物プランクトンを食べて、その光を感じる遺伝子を生殖細胞に取り込むことで初めて目を持った。食べたものが子孫を変えていくんです。

●種を未来に残すために

雄性不稔のタネと同様に、安全性に疑問を持たれていたのが遺伝子組み換えのタネですが、こちらはあまりにも消費者から評判が悪くなってしまって、ヨーロッパの方ではもう遺伝子組み換えのタネを受け入れている国はスペインだけになってしまいました。

それでモンサントのような巨大タネメーカーも遺伝子組み換えからは手を引き始めています。アフリカの貧困国の援助のためだけにタネを作っていてもしょうがないということで。

最近モンサントが新たにはじめたことが、日経サイエンスでは「組み替えなしで高速育種」、WIREDでは「完全野菜」というタイトルで紹介されています。これからはこれだと、モンサントが一生懸命進めようとしているのですが、交配技術で作るということは雄性不稔で作っているのではないかと。ミトコンドリア異常で子孫をつくれない野菜を交配してできたF1の野菜を完全野菜と称して世界中にばらまこうとしているのではないかと懸念しているんです。

(モンサントの遺伝子組換え野菜に反対するデモ)

●タネが採れないということは、タネを盗まれないということ。自社の技術を独占できるということなんです、こんなに簡単なことはない。遺伝子組み換えというのは花粉にまで遺伝子が含まれていますから技術を独占できない。誰かがタネを採ろうと思ったら取れてしまう、だからいまは特許で縛っています。でも雄性不稔にすれば、花粉そのものがなくなるから、タネが盗まれる心配はない。タネさえ持っていれば独占できる、大もうけできるわけです。

昔は世界で何億人もの農家たちがみんなタネ採りをやっていたから、タネを支配しようなんてことはできなかった。しかしタネは買うものになったら、種苗会社を吸収してどんどん大きくしてモンサントみたいな巨大企業になってタネを独占すれば世界の食糧を支配できる、つまり世界を支配できるんです。

私もよくタネ屋なのになぜ自家採種をお客さんに勧めるんですか、と聞かれるんです。タネを売って儲けるだけなら、こんな商売はしていません。自家採種して一軒だけでも自分の家族は健康に育てたいとタネを採ってくれていれば、もし世界中のタネがモンサントに独占されたり、そのタネのせいで人類が滅亡するとなったときに、日本中の家庭菜園のどこかに固定種のタネが残っていれば、その健康なタネを元にして、また増やすことができる。もう一度人類を復活させることができる。そのために固定種と在来種のタネの販売を続けているんです。

●タネを残す「ノアの方舟」は機能するか?

いまビル・ゲイツなどがノルウェー国家と一緒になって「最後の審判の日のための種子」と称して、もしも人類が滅亡するような時があったらそのタネで生き抜こうという目的のためにタネの保管庫を作りました。ところがそれは、零下18度から20度で冷凍保存されたタネは1000年でも2000年でも生き続けるという学術論文に基づいて行われていて、その論文を書いたのが日本の農水省のジーンバンクです。

ジーンバンクでは1980年代に、このまま雄性不稔のF1が増えていったら日本のあちこちにある在来種が消えてしまうと危惧して、それで日本中の種子屋が協力して種を集めて保存しているんです。そこではただタネを保存しているだけじゃなくて、各県の園芸試験場や育種団体、種苗会社などに新しいタネをつくる素材として譲ることもしています。

(スヴァールバル世界種子貯蔵庫)

●保存庫からタネを出すとき、零下18度からいっぺんに外に出すと体内の水分が膨張してタネの細胞を殺してしまうのでゆっくり常温に戻して、それを数グラム5000円で分けてくれる。しかし、ある種苗会社から聞いたのは、筑波のジーンバンクからF1品種の菜っ葉をつくろうとして十何品種手に入れたけど、芽が出たのは一つだけだったよと。

理論上は1000年でも2000年も生きてるはずですが、たかだか30年くらいでタネが死んてしまう。要するにタネの持っている生命力、代謝を止められた生命というのはそんなに長く生きるもんじゃないということです。その理論に基づいてノルウェーでやってるんだから、あれはおそらく壮大な無駄遣いになるでしょう。ホームページによると大根だけでも500種類くらい、だいたい1種類500粒くらい、うちで売ってる一袋の分量しか保存されていない。

筑波のジーンバンクでも最初の理想としては、ただ一カ所に保存するんじゃなくて10年か20年たったら筑波の畑に蒔いて、もう一度タネを更新して、また保存するという決まりでした。いまは委託先の団体がタネの更新をしているみたいですが、それがノルウェーになると氷河の下に穴を掘って保存しているタネ、たかだか一種類500粒くらいのタネを更新しようとしても外は氷の世界だし、ただただムダに保存しているだけだと思いますね。

●タネを残すために、私たちにできること

一時期のEUではEU内各国で農作物の共通の価格を維持するために、国に承認されたタネしか売買や流通ができなくなり、各国の政府の審査と認可が必要になりました。イギリスだと1品種あたり70万円の認可料で、特にフランスでは勝手にタネを採って流通させたら罰せられるという状況になった。自家採種したタネを交換した罪で多くの農家が投獄されましたが、最近は緩和されたようです。その理由が、認可された新しいタネの野菜より昔の野菜の方が美味かった、流通する品種が減ることは生物多様性の上で問題であると。

フランスでは4000〜5000人規模の「ココペリ」というタネを交換する団体があり、タネを自由に売買できないので、会員制の組織を作って年会費を払って、カタログに載っているタネを会員が無料でもらえる仕組みができました。育てた野菜は流通させずに自家消費して、採ったタネをまた会に送り返す。そのようなやり方で多様性が維持されています。

(種子の交換 CC BY-NC-SA 2.0, BlueRidgeKitties, Seed Swap)

●植物というものは本来変化していくべきものなんです。生命にとって「変化」は重大なテーマで、環境が変わったら自分も変わらなければ生き続けられない。植物というのは自分で歩けないので、根が生えた世界を生きるしかない。人間にとって神経や脳にあたるような思考する器官、自分の育っている環境を判断する能力は根の表面にあって、根を張ったその土地に合った子供をつくって、それが花を咲かせて、また同じ土地に落ちてまた育っていく。その土地の環境にあった体に変わっていくんです。自家受粉性の植物でも土地が変化すると、土地に合わせてどんどん変わっていきます。だから人間が品種を変えるまでもなく、植物自身が変わっていく力を持っているんです。

私はタネ屋を継ぐ前、手塚治虫の漫画編集の仕事をしていました。彼のテーマ、作品の根幹は生命。命をつなぐこと、地球の環境と生命を持続させることでした。このタネ屋のテーマも同じです。このままだと世界はお金持ちや大企業の思う方向に進むだけであって、その中で私たち個人が生き延びるためには、自分でタネをまいて野菜を育てて、それを食べて、自分でタネを採って、それを自分の子供につなぐしかないと思っています。

それをやるかやらないか、それはあなたがたの問題です。うちはタネを提供するだけです。そして一度買ったタネは二度とうちから買わないでほしい、タネをちゃんと採って欲しい。あなたの土地に合ったタネを育てて欲しい。それが野口のタネの営業方針です。

変えないことが価値をつくる、生活景がいきづくまちづくり 〜真鶴町「美の条例」2016.10.07

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222.▲F1種について F1の席巻

「F1」とは、聞きなれない言葉ですが、品種に関する用語で「雑種一代」を意味します。雑種一代とは、交配によって作られた新品種の一代目ということです。今日品種改良されてできた新品種のほとんどが、F1であるといわれます。ということは、流通している野菜や花の種の多くがF1です。例えば、あなたが家庭菜園をしようと思ってホームセンターなどで種を買うとしましょう。商品の包装袋には、たいてい「××交配」と印刷されています。これがF1種です。はっきりと「F1」と書かれているものもあります。

F1でない品種も、あることはあります。在来種とか固定種などと呼ばれますが、そのような種の袋には「在来種」などとは書かれていません。なので、F1種か在来種かを見分けるには、とりあえず袋に「交配」と書かれているかどうかで判断するしかありません。ごくごく大雑把にいって、むかしからある品種は在来種、新しい品種はF1種と考えられます。

在来種かF1種かを意識する人は少ないでしょう。でも、意識してほしいのです。在来種かF1種かということに。私たちは今、知る知らないに関わらず、F1種の野菜を食べ、F1種の花を愛でています。

F1種の何が問題なのでしょうか? 一般には、F1種は問題視されるどころか、品種改良の成功例だと考えられています。もちろん品種改良には多くの利点があり、私たちはその恩恵を受けてはいます。しかしF1種がこれほどまで拡大し、それがこの先何をもたらすかを予測したとき、この技術には疑問符をつけざるをえません。

循環しない品種

F1種は、一代限りです。その一代目の個体が人間が意図したとおりの形姿や性質を備えていれば、それで使命を果たします。その個体から二代目以降が生まれることは想定されていません。常に一代目の個体として消費され続けるのが、F1個体の宿命です。一代限りとは、そういう意味です。

実際に、F1種の個体から二代目はできにくいといわれます。子孫ができにくいのです。たとえできたとしても、二代目の個体は親とは全く違った形姿や性質をもっているなど、同一品種としての特性を保持しずらくなっています。そうなると元々の品種改良した目的から外れてしまうので、F1はF1止まり、すなはち一代限りで終わるのです。

これに対して在来種は、品種としての特性が親から子、子から孫へと代々保たれています。ゆえに、世代を超えて種として存続していくことができます。このことは逆に、在来種が長い年月をかけて環境に適応しながら生き延びてきた証でもあります。

一代限りのF1種は世代を超えて生命の受け渡しをすることができませんから、循環しない品種ともいえます。厳密にいえば、品種とすら呼べないかもしれません。F1種は、人工交配によって生みだされたハイブリッドのあだ花なのでしょう。

生命の操作

新品種が開発されるさいには、ある特定の目的をもっています。例えば、収量が多い、成長が早い、均一性がある、形や大きさが運搬に適しているといった生産者の都合や、甘い、柔らかいといった消費者の嗜好に合致する性質を作ることです。新品種はそのように作られますから、その結果として、1.個体間のバラつきが少なく、2.成長が早く、3.一斉に発芽し一斉に収穫できるという特徴をもつようになります。

人間にとって都合のよい品種は自然界にはなかなか存在しませんが、このような品種改良の技術を使えば、自然の状態では決して交じり合うことのない品種同士からまったく新しい品種を作りだすことができます。例えば、多収量かつ早く実のなる作物を作りたいときには、多収性の植物と早く実がなる植物を選びだし、人工交配します。人工交配には、ピンセットを使う原始的な方法から、植物に放射線を照射して突然変異を起こす方法、あるいは細胞と細胞を無理やりくっつける細胞融合といったさまざまなバイオテクノロジーの技術が用いられます。

自然界に目を向けると、そこには異なった種の間では生殖ができない種の壁が厳存します。バイオテクノロジーはその種の壁を破り、自然界では決して交わることのない異種間の新品種を作りだすことを可能にしました。そしてこのような人為的な生命操作技術の先には、遺伝子組換え技術があります。遺伝子組換え技術を使えば、植物の遺伝子と動物の遺伝子を合体させることもできます。

種の壁を越えて突き進んでいく科学技術を、私たちはどう扱うべきなのでしょうか? 科学が植物のみならず動物の生殖にも介入するようになり、ようやく倫理的な視点が生まれてきてはいます。しかしこのことについて、人類はまだきちんとした原理原則を打ちだせていません。

“緑の革命”のからくり

F1種が急速に広まったのは、ここ40年ほどのことです。1950年代から、とうもろこし、小麦、米など穀物のF1新品種が世界各地で導入され、その結果収量が増大して人々を飢えから救いました。これが「緑の革命」と呼ばれる農業改革です。緑の革命は、F1ハイブリッド種の導入によって農業の近代化を達成した成功例として称賛されてきました。

しかしながら結局は、緑の革命は失敗に終わりました。F1種を導入した地域では、確かに短期的には穀物の収量が飛躍的に増えましたが、思わぬ落とし穴もありました。それは、F1種と、それと同時導入された化学肥料と農薬の影響です。

F1種は元々、耐肥性をもつように作られています。というのは、F1種の栽培は多肥が前提だからです。化学肥料を多く投入すれば作物はよく成長しますが、一方で雑草もよく繁茂し、それだけ除草剤の量も増えます。この栽培方法では確かに短期的には収量が増えますが、長期的には、土壌の劣化や害虫の発生などで栽培が困難になり、結局は収量が減ることになるのです。

F1種、化学肥料、農薬、この三つは、近代農業に必須の三点セットです。これらは、農家が毎年購入しなければならないものです。つまりそれだけお金がかかります。大きな成果を期待して近代的農業を採り入れた国々では、今では病害虫、土壌汚染、多額の負債、貧富の格差といった問題を抱えるようになりました。

種子支配

F1種の普及は、思いがけない深刻な事態をもたらしています。種の多様性が、どんどん損なわれているのです。と同時に、種子支配も進行しています。F1種が普及すると農家は毎年その種を種子会社から買うようになり、これまで自ら行っていた採種をしなくなります。その結果、その地域で固有に存在していた伝統的な品種が放棄され、次々と消滅しています。

利益を手にするのは、種子会社です。農家が種子を種子会社から買い続ける限り、種子会社はもうかります。このことは単に農家と種子会社の経済の問題にとどまらず、農作物の作付けや流通にまで大きな影響を与えています。種子会社が種子の製造販売そして流通を握ることにより、農家が作付ける作物から消費者の口に入る食べ物までが種子会社の都合に左右されることになるのです。これが種子支配です。

種子支配に先鞭をつけたのは、F1種です。今後商品がF1種から遺伝子組み換え種子に取って代れば、私たちは遺伝子組み換え作物を望もうが望むまいがまったくおかまいなしに、種子会社の販売する遺伝子組み換え種子の作物しか口にできなくなるでしょう。

種の多様性

多様性こそが自然の理であり、生命の理であると、フランス人植物学者ジャン=マリー・ペルトは述べています。現存する種の多様性を守ることは、調和のとれた都市の魅力や各々の民族の伝統を尊重することと同義であると、彼は熱く主張します。

科学者のみならず一般市民たちも、多くの種が絶滅の危機に瀕している現実を問題視し始めています。FAO(国連食糧農業機関)や各国の研究機関など、遺伝子バンクを設立してさまざまな植物の品種を保護することに乗りだしているところもあります。市民団体やNGOなども、在来種を保存したり自家採種を実践する草の根の活動を展開しています。

種の多様性を取り戻すために、私たちはいったい何をすればいのでしょうか?まず見直すべきは、農業のやり方です。現行農法においては、三点セットといわれる農薬、化学肥料、それらの使用に耐える品種が必須でした。しかしその過程で品種が画一化され、土壌を劣化させてきた事実があります。まずはこのことに向き合わなくてはならないでしょう。

農業の本文は、人々を食べさせることです。一時的な利益を追求するあまり、農地を傷めたり収穫を共倒れさせるようなことをすれば、飢えを招きかねません。従って、私たちは永続的な農法を採用すべきです。そのさい求められるのは、農薬と化学肥料を使わないことを前提とした品種なのではないでしょうか。循環する種子を復活させ、永続的な農法へ転換する、これができるかどうかは、私たちが自然に対して真摯な態度をとれるかどうかにかかっています。

2003年5月

[参考図書]:ヴッパタール研究所編著『地球が生き残るための条件』__ミシェル・ファントン、ジュード・ファントン著『自家採取ハンドブック』

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333.● 野口さんのF1種の解説は 次の通り

野口種苗ロゴ

交配種(F1)野菜とは何だ?【1】

 

1.F1野菜っていったい何なのか、まず簡単に概論から。

 

(1)なぜ交配種で作った野菜は均一にそろうのか?

メンデルの法則によります。

メンデルの第一法則「優劣の法則」により、異なる形質を持つ親をかけ合わせると、その第一代の子(F1=雑種第一代)は、両親の形質のうち、優性だけが現れ、劣性は陰に隠れます。あらゆる形質でこの優性遺伝子だけが発現するため、交配種野菜は、一見まったく同じ形にそろいます。
反面、交配種野菜からタネを採ると、優性形質3に対し、1の割合で隠れていた劣性形質が現れます。(メンデルの第二法則「分離の法則」)野菜の場合、発芽速度、草丈、葉色、根群、果色はじめあらゆる形質で劣性遺伝子が分離して顔を出すため、F1から自家採種したF2世代は、見るからにバラバラの野菜になってしまいます。(F3世代は当然もっともっとバラバラになります)

念のため付け加えると、ここで言う優性と劣性とは、どちらかがもう一方より優れた性質であるということではありません。異なる二者をかけ合わせた時、表面に出るほうを優性、隠れるほうを劣性と解釈するだけですので、お間違えないよう。
例えば、黒髪の日本人の男性と、金髪の北欧の女性が結婚すると、二人の間には、すべて黒い髪の子供が生まれます。これは、金髪より黒髪が、遺伝子として比較したとき優性だということですが、金髪より黒髪のほうが優れているということではありません。当然ですよね。(笑)
(人間に置き換えると理解しやすい時は、今後も人間に置き換えて例示することにしましょう)

(2)なぜ交配種の野菜は生育が早く収量が多いのか

雑種強勢の効果です。

人間でもそうですが、近い親戚同士などで近親婚をくり返していると、やがて生命力が衰え、体格も貧弱になってきます。これを近交弱勢または自殖弱勢と言います。
対して、人種や国籍が異なるなど、遺伝的に遠い組合せで結婚すると、両親より大きく、逞しく、丈夫な子が生まれます。この効果は、両親の遺伝形質が遠く離れていればいるほど、顕著に現れます。これを雑種強勢(ヘテロシスまたはハイブリッド・ビガー)と言います。

(1)の、均一性をもたらす優性遺伝子の働きがF2以後効果がなくなるように、雑種第一代(F1)に現れた雑種強勢は、その子(F2)、孫(F3)と、世代を重ねるごとに、染色体の減数分裂によってその力を弱めます。トウモロコシでは、近縁のF1同士をかけ合わせたF2世代になって、初めてこの雑種強勢が出るなどという特異な例もありますが、市販されている交配種が最も強健で、以後だんだん弱くなるというのは同様です。

このように一代雑種の利点は、異なる二品種(またはそれ以上の組合せ)の親から生まれた一代目の子にしか現れませんから、種苗会社は、異なる親のそれぞれを毎年維持し、販売用種子を生産し続けるために、毎年同じ組合せで交配し続けなければなりません。

(3)自分の花粉でタネをつけないために

一代雑種の雑種強勢効果は、種をつける母親株の雌しべに、異なる品種の雄しべの花粉が付いて受精した時だけ現れます。同一品種の雄しべの花粉が、雌しべに付いた時は、当然ですが「優性の法則」も「雑種強勢効果」も現れません。

野菜の花の中には、キュウリやトウモロコシのように雄花と雌花が一株に別々に咲くもの(雌雄異花)、ホウレンソウのように雄株と雌株が別々に育つもの(雌雄異株)、ナスやナッパのように小さな花の中に雄しべと雌しべが同居しているもの(両全花)など、いろいろな花があります。それぞれの花の形体や性質によって、毎年販売するための交配種を、毎年効率良く生み出すための生産技術が、いろいろ工夫されてきました。

その工夫とは一言で言うと、「自分の花粉ではタネをつけないようにする工夫」です。つまり、雄しべや雄花、雄株を取り除く「除雄(じょゆう)」という技術や、自分の花粉では実らなくする「自家不和合性の発現」(これについては小カブのページで書きましたが)という技術や、「雄性不稔」という、人間にも時々起こる無精子症のように、男性機能が不能になった突然変異株を見つけて母親株に利用する技術などです。

むりやり人間の話に置き換えるとしたら、日本人の家庭から父親や男兄弟を取り除き、代わりに、人種の異なる外国の男性を送り込んで、日本人の妻や娘との間に、子を持つことを許されない、一代限りの逞しい戦士を、毎年生ませ続けようとする技術…と、でも言いましょうか。(笑)

以後、除雄の方法のいろいろを手始めに、作物ごとに、実際の作業の様子を探っていきます。

「2.除雄のいろいろ」「3.自家不和合性と雄性不稔」「4.遺伝子組換えの利用」と続く予定です。

 


[ひとりごと]
以前、「交配種と固定種」というページを作り、あるメーリングリストで「うちは固定種中心の時代遅れのタネ屋です」と
自己紹介したら「素人だって交配して品種改良している。交配に否定的な物言いするなんてタネ屋として失格ではないか」
と、言われてしまった。(笑)「品種改良のための交配と、販売種子を生産するための交配技術とは別です」と返事したが、
果たして分っていただけたかどうか? ずっと気にして、交配種(F1)について一度ちゃんと書いておこうと思ってました。
種の世界と言うのはまったくブラックボックスで、誰も何も知らないうちに、毎日食べている野菜の中身が変わっていく。
(小松菜にチンゲンサイを交配した野菜が、昔の小松菜と同じわけがないのに、タネも野菜も小松菜として売られている)
「これでいいんだろうか?」と、思っている種苗業界人は、決してぼくだけでは無いと思うのだが。(2003.9.28)


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