2015年4月8日
フィンランドといえば、「ムーミン」や「サンタクロース」の故郷として世界的にも有名ですよね。最近では、「イッタラ」や「アラビア」などの北欧食器でも認知度が高まっています。そんな世界的にも有名なものを生み出しているフィンランドですが、実は「教育」も世界から注目を集めているのをご存じですか?今回は、フィンランド式教育の特徴や制度などをまとめました。フィンランド式教育とは?
フィンランド 湖 森 風景
フィンランドで行われている教育を、「フィンランド式教育」と呼んでいます。経済協力開発機構(OECD)が2000年から3年ごとに世界41ヶ国の15歳を対象に学習到達度調査(PISA)を実施していますが、そこでフィンランドは常に上位に入っています。2003年に「科学」「問題解決能力」「数学」「読解力」の4分野においてトップを占めたことで、世界的にも注目されるようになりました。この背景には、1970年頃から始まったフィンランドでの教育改革にあります。国土も小さく、天然資源もなかったフィンランドは、「人材こそ財産である」と考え、教育への投資を拡大することを決断しました。そして、全国民に公平な教育ができるように、就学前から大学まですべての教育を無償化します。これらの教育改革を経て、世界的にも高水準の成果を生み出すフィンランド式教育が生み出されたのです。フィンランドの教育制度の特徴は?
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フィンランドの教育制度は、日本と同じように1~6年生の初級(日本の小学校)と7~9年生の中級(日本の中学校)の9年間が義務教育としてあります。その後は高校、大学と進むのは日本と変わりませんが、すべてが無償で受けられる点が全く異なります。教育がすべて無償であること以外にも、以下のような特徴があります。
就学前教育の存在
小学校に入学する前の1年間、6歳児を対象に就学前教育(プリスクール)での準備期間があります。読み書きや数字、社会道徳などを学び、小学校で学ぶ上での基盤を整えます。就学前教育は任意参加ですが、ほとんどの子供が参加します。この教育も無償で受けられます。
徹底した修得主義
フィンランドでは子供がきちんと習ったことを身につけられているかどうかを大切にします。たとえばプリスクールで習った内容の習熟度が不充分だと判断すれば、保護者やプリスクールの先生と話し合って小学校入学を1年遅らせる場合があります。中学校を卒業する時も、希望する高等学校に進学する学力に満たないと判断した場合は「10年生」という特別プログラムで、もう1年勉強ができます。
フィンランド式教育の内容は?
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フィンランド式教育では、子供たちの学力を高めるために様々な工夫を行っています。子供たちが好奇心をもって楽しく学べるようにすることを大切にしています。特に日本とは異なるフィンランド式教育の工夫をご紹介します。
入学試験がない
日本のように高校入学のための試験はありません。入学試験がない代わりに、9年の義務教育期間中の成績の平均点で希望の高校の合否が決まります。生徒は5つ希望の高校を選び、成績のよい順に希望の高い高校へと進みます。義務教育期間中の成績はペーパーテストだけでなく、日々の学習の取り組みや成果も評価対象となっています。
子供が自ら考えて学ぶ
子供の自主性に任せた教育が行われます。勉強はあくまでも生きていくために必要なものだということを理解させ、小学校の間はテストや宿題といったものが課されることはありません。興味をもったことを自主的に学習するように促します。
脱落者を出さない
国民全員に教育を行き渡らせるために、脱落者を出さないことを重視しています。勉強のできない子供をフォローするので、わからないことが出て勉強嫌いになる子供はほとんどいません。
教師の質が高い
子供たちに最高の教育を提供するために、フィンランドの教師は大学院で修士課程を修める必要があります。教師は信頼され、尊敬される対象であり、子供も教師に憧れを抱いています。優秀な人間が教師になることで、その下の世代をしっかりと教育するという好循環が生まれているのです。
フィンランド式教育を受けた子供はどう育つ?
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世界的な学力テストで、常にトップクラスにあるのがフィンランド式教育の大きな成果だといえます。そのほか、子供の自主性に任せる教育が行われるため、成長した後も自分自身の創意工夫を大事にします。会社では効率性を大切にし、任された仕事を効率的に達成することを考えられるようになります。また、ワークライフバランスを大切にし、家族と一緒にいる時間を重視する姿勢も、競争社会とは無縁の環境で暮らしてきたことが土台になっていると考えられています。
詰め込みとは違うフィンランド式教育の可能性
フィンランドの学校は年間の授業日数が約190日間となっており、学習到達度調査(PISA)に参加しているOECD加盟国の中でも最も少ないです。その分、子供たちは自分の好きなことや遊びに使うことができます。日本のように学校のあとは塾に行って、受験のための詰め込み教育に追われる姿とは対照的かもしれません。文化的背景が異なるので一概には言えませんが、フィンランド式教育から取り入れられる部分はありますよね。2015年にはフィンランド式教育を実践する幼稚園「ムーミン幼稚園」が東京に開園したことがニュースになりました。フィンランド式教育に興味がある方は、問い合わせてみてはいかがでしょうか?
モンテッソーリ教育とは?特徴や方針、教具・教材は?
モンテッソーリ教育とは?
出典: マリア・モンテッソーリ (ja.wikipedia.org)
モンテッソーリ教育とは、イタリア初の女性医師であるマリア・モンテッソーリが考案した教育法です。1907年にローマのサン・ロレンツォ街に「子どもの家」を設立し、もともとは発達障害児向けに行った療育を元に、貧困層の子供たちを対象とした幼児教育を実践し、この教育法を確立します。その後、この教育方法は支持を集めて国際的に広まっていきました。
「子供がもつ自らを成長・発達させる力を尊重し、子供たちの自由で自発的な活動を援助する」のがモンテッソーリ教育の目的です。そのために「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」という5つの側面で、子供たちが学び合い支え合えるような教育を実践しています。
モンテッソーリ教育の特徴は?
モンテッソーリは子供の発育段階で興味の対象が異なる点に着目し、子供の能力獲得にはそれぞれ最適な時期があると結論付けました。この最適な時期を「敏感期」と名付け、子供の成長段階にあわせて「運動の敏感期」「感覚の敏感期」「秩序の敏感期」「話し言葉の敏感期」「文字に対する敏感期」「数に対する敏感期」「文化の敏感期」などがあるとしています。敏感期は子供によって異なるので、一人ひとりと個別に向き合いながらその自主性を尊重して教育を実践します。また、様々な年齢の子どもで1つのクラスを編成するのも特徴的です。年下の子供が年上の子供の活動を見て学び、年上の子供が年下の子供の世話をすることで自らも成長することを促します。
モンテッソーリ教育の「整えられた環境」とは?
モンテッソーリ教育では、子供が自発的に活動できるように、「整えられた環境」を準備することを大切に考えます。整えられた環境とは、「自分で自由に教具を選べる環境」「使ってみたいと思わせる教具」「社会性や協調性を育める異年齢のクラス」「発達段階にあわせた援助ができる教師」の4つを満たすものとしています。この環境があって初めてモンテッソーリ教育が実践できると考えています。
モンテッソーリ教育で使用する教材や教具は?
モンテッソーリ教育では、何を育てるかで使用する教材や教具が異なります。5つの側面それぞれで具体的に紹介します。
日常生活の練習
日常生活における大人の行動を真似したがる時期を「運動の敏感期」ととらえます。体を盛んに動かして環境に働きかけるこの時期に、自分のことを自分でできるように、秩序だった動き方や身のこなし方を教えます。教具は、日常生活の道具を子供が使いやすいサイズに小さくして、プラスチックなど子供向けではなく陶器やガラスなど本物の素材で用意します。
感覚教育
2~6歳の子供は「感覚の敏感期」に位置づけられます。この時期は視覚、聴覚、触覚、臭覚、味覚の五感が成長する時期ととらえ、それぞれの感覚器官を刺激します。教具としては、聴覚を刺激する音感ベルや触覚を刺激する触覚版を用意します。
言語教育
言語は「名詞」「形容詞」「動詞・助詞」の順に発達すると考え、これらを系統だって学ぶことで「言語」を完成させていきます。幼児期の言語が発達する時期に、絵が描かれたカードや50音の文字が書かれたカード使って、発育段階に即して語彙を増やします。
算数教育
算数棒やビーズなどの実物を使って、数を体感させることから始めます。「数量」と、それを言い表す「数詞」、文字で表現するための「数字」の三者の関係をきちんと把握できるようになることを目指します。そして、十進法から足し算・引き算・かけ算・わり算を順序立てて教えます。
文化教育
動植物や地理、歴史、音楽、美術といった文化的なものに対しての教育を行います。惑星の模型や世界地図などで知的好奇心を刺激し、多岐にわたった能力を育むことを目指します。
モンテッソーリ教育を受けた子はどう育つ?
モンテッソーリ教育を受けた子供の特徴として、
・順序立てて物事を考えられる
・自分で決めたことは最後までやり遂げる
・人の長所を見つけるのがうまい
といったことがあげられます。
実際にモンテッソーリ教育を受けた著名人には、ECサイトの「Amazon」創設者であるジェフ・ベゾスや検索サイト「Google」の共同創設者のサーゲイ・ブリンとラリー・ペイジなど、世界的に活躍する人が多数います。どの人にも、まさに自分の頭で考えながら、その考えを実現する姿勢を体現しているのではないでしょうか?
モンテッソーリ教育は保育園や幼稚園でも実践されている
モンテッソーリ教育は、他の幼児教育と同じように、「子どもの自主性」を大切にします。日本の学校教育ではおろそかにされがちな自主性の大切さを説いているので、今の学校教育に疑問を持つ方にとってはとても興味深い内容だと思います。ただし、子供によってはこの教育方法があわない子もゼロではありませんので、子供に押し付けるのではなく、一緒に教育方法を見つけたいですね。モンテッソーリ教育を採用している保育園や幼稚園もありますので、興味があれば一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。