背景と目的
2006年7月、日本政府は「平和と繁栄の回廊」構想を提唱しました。この構想は、イスラエル・パレスチナ間の和平には「二国家解決」の実現が重要との前提に立ち、イスラエル、ヨルダン等近隣諸国とも協力した、持続的な経済開発を伴う健全なパレスチナ国家の樹立が不可欠である、との考え方から提案されたものです。
パレスチナの持続的な経済開発のためには民間セクターが主要な役割を果たすと考えられます。「平和と繁栄の回廊」構想を具現化する取り組みの一つである、ジェリコ地域における農産加工団地の開発をJICAは支援しています。
概要
ジェリコ及び周辺のヨルダン渓谷を中心として生産が盛んな農作物を加工し、付加価値を付けて隣国ヨルダン経由で輸出、あるいはパレスチナ内に出荷することなどを目指し、ジェリコ市郊外に農産加工団地を開発しています。農産加工団地の実現にあたっては、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン、そして日本の4者が協議しながら進めることや、農産加工品の輸出によりパレスチナと他国間での流通活性化を目指すことを通じ、パレスチナの経済のみならず、他国との信頼醸成、ひいては平和構築を促して行くことが期待されます。
まずはステージ1として11.5haの敷地の開発が予定されていますが、JICAはその実現に向けて、以下の協力の実施、および具体化のための支援を行っています。さらに、これらの協力が日本政府・JICAの他の様々な協力とも連携しつつ、ジェリコ地域の面的な開発へと繋がることを目指しています。
- 「ヨルダン渓谷農産加工・物流拠点整備計画F/S」(2007年3月~2009年5月)
- ジェリコ農産加工団地の基本計画を策定したフィージビリティ調査。
- 「ジェリコ農産加工団地のためのPIEFZA機能強化」(2010年9月~2012年3月)
- ジェリコ農産加工団地を管理・監督する、パレスチナ産業団地フリーゾーン庁(PIEFZA)のキャパシティディベロップメントを支援する技術協力プロジェクト。
- 「ジェリコ市水環境改善・有効活用計画」
- 将来的にジェリコ市民に加えて農産加工団地からの排水を処理する予定です。
- 「太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画」
- 将来的には、発電した電力を農産加工団地に供給する予定です。
以上に加えて、日本政府はUNDP(国連開発計画)」を通じて、農産加工団地からジェリコ市街へとつながる道路の改修、ステージ1用土地の造成、上水施設の改善・設置を実施してきています。
September 26, 2013
First Factory Sets Up in Jericho Agro-Industrial Park
The conclusion of the contract is a large step toward making the Corridor for Peace and Prosperity a reality
In a major step forward for a Japanese Middle East peace initiative, a contract was concluded on July 10 for the first tenant company in the Jericho Agro-Industrial Park in the West Bank.
The park, known as JAIP, was created with Japanese cooperation. JAIP is the flagship project of the Corridor for Peace and Prosperity initiative proposed by Japan in July 2006 with the goal of regional cooperation, and the contract for the first tenant company can be called a remarkable step toward making the corridor a reality.
JAIP’s first tenant, a Palestinian company, will process frozen foods, dried fruits and the like using the produce of Jericho area farmers. Next a factory will be built and equipment installed, then about 30 newly hired local employees will begin work.
JICA’s efforts to bring the corridor initiative to fruition
Jericho is located in the West Bank and it has good access to the Jordan River. The history of Jericho stretches back some 10,000 years and the area has rich tourism resources including the ruins of King Herod’s winter palace and the Mount of Temptation, where it is said that Christ fasted for 40 days and 40 nights. The land is rich in spring water and other natural resources, and agriculture is a key industry.
To help bring to fruition the Corridor for Peace and Prosperity concept, in 2006 JICA carried out the Jericho Regional Development Study Project in Palestine for the development of Jericho. In this study, which used a participatory planning approach, almost 50 group discussions were held among the Palestinian Authority, the city of Jericho, JICA and other stakeholders. As a result, a comprehensive Jericho regional development plan was formulated that takes careful account of local needs.
Based on the results of this regional comprehensive development survey, JICA cooperated with the establishment of JAIP so that agriculture could play a leading role in the sustainable economic development of the region. The aim of JAIP is to process the crops grown abundantly in the region centered on Jericho and the surrounding Jordan Valley, and after adding value, export them via the Jordan to neighboring countries or ship them within the Palestinian territories.
From 2007 to 2009, JICA carried out a feasibility survey and formulated a detailed infrastructure improvement plan for JAIP. So far, land preparation has been carried out and a solar power generation system, a water supply and storage tanks and a sewage treatment facility have been put in place.
Moreover, JICA since 2010 has been training employees of the Palestinian Industrial Estates and Free Zones Authority, which manages and oversees industrial areas in the Palestinian territories. This is part of JICA’s work to accelerate the establishment of JAIP through soft infrastructure in addition to hard.
Toward Middle East Peace
The relationship between Israel and the Palestinians, involving refugees, the status of Jerusalem and the demarcation of national borders, gets more complex with the passage of time. So Japan continues nurturing stakeholders on the Palestinian side, accumulating meetings with several countries and building relationships of trust with stakeholders while working to bring to fruition the Corridor for Peace and Prosperity initiative, As one actor representing Japan, JICA is also playing its part.
JICA will continue cooperation that contributes to the large international project of Middle East peace.
ジェリコ農産加工団地のためのPIEFZA機能強化プロジェクト
(The project for institutional strengthening of PIEFZA for the agro-industrial park in Jericho)
- パレスチナ [協力地域地図(PDF)]
- 2010年9月~2013年3月
- 技術協力
- 民間セクター開発
パレスチナ(ヨルダン川西岸地区)では、農産加工・物流の拠点として、ジェリコ農産加工団地(JAIP)の開発・運営に関する準備が進行しています。しかし、JAIPの設立・運営を所管するPIEFZAでは、必要なノウハウを有するスタッフや予算の不足が深刻で、また、イスラエルとの関係による政治的・経済的な制約や世界的な景気後退により、戦略的な観点からの立て直しが求められています。この協力では、PIEFZAの能力強化を支援し、パレスチナ経済の自立化を包括的に支援します。
協力現場の写真
- 工業団地予定地
- 工業団地予定地
- ワークショップの様子
ジェリコ農産加工団地のためのPIEFZA機能強化プロジェクト
- パレスチナ [協力地域地図(PDF)]
- 2010年9月~2013年3月
- 技術協力
- 民間セクター開発
外務省の情報:
パレスチナ問題は半世紀以上も続くアラブとイスラエル紛争の核心であり、中東和平の問題は日本を含む世界の安定と繁栄にも大きな影響を及ぼすものです。日本は、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決を支持し、これを推し進めていくためには、一方の当事者であるパレスチナの社会経済の開発を通じて、国づくりに向けた準備を行っていくことが不可欠と考えます。1993年のオスロ合意によるパレスチナ暫定自治の開始以降、日本をはじめとする国際社会は積極的にパレスチナに対する支援を展開してきています。
パレスチナ自治区の人々は、イスラエルによる占領に大きな不満と反発を抱きつつも、経済面では、長年にわたる占領のために、イスラエル経済と国際社会からの支援に大きく依存せざるを得なくなっています。こうした状況が、中東和平の問題解決を一層難しくしています。また、イスラエルの占領政策や停滞する経済により広がる地域格差や高い失業率も、地域の情勢を不安定にする要素となっています。今後、パレスチナが真の和平に向けてイスラエルと交渉できるような環境を整備するためには、こうした人々の生活状況を改善しつつ、同時にパレスチナ経済を自立させることが最も重要な課題になっています。
< 日本の取組 >
日本は、ODA大綱の重点課題である「平和の構築」の観点も踏まえつつ、パレスチナに対する支援を中東和平における貢献策の重要な柱の一つと位置付け、特に1993年のオスロ合意以降、米国、EU(欧州連合)などに次ぐ主要ドナーとして、パレスチナに対して総額約13.5億ドルの支援を実施しています。具体的には、日本は、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区の社会的弱者やガザ地区の紛争被災民等に対して、その悲惨な生活状況を改善するために国際機関やNGO等を通じた様々な人道支援を行うとともに、民政の安定・向上、行財政能力の強化、持続的経済成長への促進のためにパレスチナ自治政府を積極的に支援し、将来のパレスチナ国家建設に向けた準備とパレスチナ経済の自立化を目指した取組も行っています。
また、2006年7月以降は、将来のイスラエルとパレスチナが平和的に共存し、共に栄えていくための日本独自の中長期的な取組として、日本、イスラエル、パレスチナおよびヨルダンの4者による域内協力により、ヨルダン渓谷の社会経済開発を進める「平和と繁栄の回廊」構想を提唱し、現在その具体化に向けて、ジェリコ市郊外の農産加工団地建設に取り組んでいるところです。同農産加工団地は、ヨルダン川西岸地域で作られた農産物を加工し、パレスチナ内外に流通させることを目的としており、将来的には約7,000人の雇用を創出することが見込まれています。
●パレスチナ自治区
ジェリコ農産加工団地(JAIP)
日本は、2006年から、イスラエルとパレスチナの共存共栄に向け、日本とパレスチナ、イスラエルおよびヨルダンの4者による域内協力でヨルダン渓谷の経済社会開発を進める「平和と繁栄の回廊」構想を打ち出し、その中核事業である「ジェリコ農産加工団地(以下JAIP(ジャイプ))」の建設・運営に協力しています。
ヨルダン渓谷では、農業が主要な産業でしたが、イスラエルの占領政策の影響で自治区内の物流が制限され、新鮮な農産物を地域内外の市場に出荷できなくなってしまいました。貧困層の農民は収入を失い、苦しい生活を強いられています。JAIP事業は、こうした問題を解決するため、ジェリコ市に、周辺地域で生産された農産物を日持ちのする製品に加工する産業団地を建設するものです。
日本は、JAIPの道路、太陽光発電施設、上下水道、管理棟など各種周辺インフラを整備しました。JAIP整備の一環としてジェリコ市で初めての下水処理施設も建設しました。これは、地下水を共有する隣国イスラエルも恩恵を受けることから、双方の信頼関係を育むことにも貢献しています。また、技術協力を通じ、JAIPの持続的な運営に必要な人材育成も支援しています。こうした日本の取組はパレスチナの民間企業に高く評価され、これまでに2社が入居の正式契約、その他32社の企業が入居に関心を示しています(2014年1月時点)。ここで生産された製品は、自治区だけでなく、隣国ヨルダンを通じて湾岸諸国にも輸出される可能性があり、JAIPは、7,000人の雇用を生み、被雇用者の家族を含めて2万人から3万人が恩恵を受けると見込まれています。
JAIP事業は、パレスチナの民間セクターの振興を通じてパレスチナ経済の自立化を促すと同時に、近隣諸国との信頼関係が良い方向に向かい、今後の和平プロセスにも好影響を与えると期待されています。
2012年8月3日 完成した太陽光発電システム 発電状況を確認するモニター 2012年7月17日、プロジェクト関係者が気温46度を超える灼熱のジェリコにおいて、太陽光発電システムの機能を一つ一つ確認しながら最終検査を行いました。その結果を受け、ラマダンを目前に控えた同19日、パレスチナ暫定自治政府・エネルギー・天然資源庁にて太陽光発電システムの引渡し署名が行われました。 パレスチナ暫定自治区はイスラエルの占領下にありますが、エネルギー資源に恵まれていないこの土地において、特にエネルギー問題はイスラエルの占領政策により、非常に厳しい状況におかれています。JICSは、日本国政府の実施する対パレスチナ向けノン・プロジェクト無償により、石油製品の調達を行っていますが、パレスチナは増加する電力需要に対応した費用の増大に非常に苦慮する状況が続いています。 本プロジェクトはパレスチナ暫定自治地区における初めての大規模な太陽光発電であり、パレスチナにとっては大きな可能性を秘めた第一歩となりました。また、本プロジェクトサイトは日本国政府が整備を促進している農産加工団地の一画に位置し、「平和と繁栄の回廊※1」構想及び再生可能エネルギーに係る日本国の取り組みを相乗的にアピールする、まさに日本国の対パレスチナ支援の顔となることが期待されています。 引渡し署名時に、施主であるパレスチナ暫定自治政府・エネルギー・天然資源庁長官補佐のジャマル・アブ・ゴッシュ氏は、このプロジェクトが太陽光発電システムに対する取り組みの大きな前進であるとして謝意を表されるとともに、今後、パレスチナにおけるより一層の再生可能エネルギーの発展を牽引して行く決意を示され、プロジェクト関係者の労をねぎらわれました。 ※1:平和と繁栄の回廊:イスラエルとパレスチナの共存共栄に向けた日本の中長期的な取り組みのことで、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン、日本の4者からなる協議体を立ち上げ、日本のODAを戦略的・機動的に活用しつつ、域内協力の具体化に取り組むことも含まれています。
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パレスチナ地域:UNDP/PAPPと日本のパートナーシップ
2014/04/23
日本政府の資金協力によりUNDP/PAPPが実施したガバナンス分野のプロジェクトにおける住民向けワークショップの様子 PHOTO: UNDP/PAPP image Bank
日本政府は、国連開発計画(UNDP)が被占領下パレスチナ地域で展開する「パレスチナ人支援プログラム(UNDP/PAPP)」の最大のパートナーです。日本は、長年にわたり、不安定な情勢下でも支援を継続してきました。これまでの支援総額は累計4億ドルに達します。こうした日本の支援により、パレスチナの人々の暮らしをサポートする様々なプログラムが、UNDP/PAPPにより実現されてきました。
日本政府の資金協力を受けたUNDP/PAPPの活動分野は、農業用を含む給水や下水設備、インフラ、保健、農村開発や情報通信まで、多岐にわたります。いずれの活動も、人々のニーズに応える雇用機会の創出・能力強化・インフラ整備、という共通目標のもとに実施されています。
日本政府によるUNDP/PAPPを通じた支援は、被占領パレスチナ地域で暮らすパレスチナ人の経済的・社会的困難に向き合う取り組みであり、極めて大きな意義を有します。以下に、日本政府の支援が生んだ成果と今後の計画を、1)貧困削減と農業、2)ガバナンス、3)インフラ整備、4)水と衛生、という支援分野ごとに紹介します。
1.貧困削減と農業
UNDP/PAPPの事業のひとつである「パレスチナ土地開拓プログラム」は、日本政府の資金協力のもと、パレスチナ自治政府農業省との連携により、1997年に始動しました。同事業は、立ち上げに際し日本政府より550万ドルを供与され、2001年まで活動しました。その結果、第1フェーズでは、約800ヘクタールの土地が開墾され、農地として利用されました。
第1フェーズが成功し、住民の生活改善と農業用地の保全に大きく貢献したことを受け、スペイン、イタリア、イスラム開発銀行、国際農業開発基金等、他のドナーの事業参加も実現しました。プロジェクト開始から約20年を経た今日、共同プログラムへと成長した本事業のもとで、農民2万人のために約9000ヘクタールの農地が開墾され、370万本の果樹が栽培されています。この過程で、数千人規模の雇用機会も創出されています。
2014年も、日本政府より約540万ドルの供与を受けた「西岸地区における即効型小規模インフラ整備」プロジェクトの一部として、300万ドル規模の農業・給水関連事業を実施する予定です。農業分野の活動には、150人が耕作する110ヘクタールの農地開墾、65キロメートルの道路敷設が含まれています。これにより、遠隔地の150ヘクタール分の農地への交通の利便性が向上し、農業に従事する1000人に裨益することが期待されます。また、給水分野の事業により、プロジェクト対象地域の貯水能力をさらに2万3000立方メートル拡張する計画です。本事業は、2015年4月までに完了する予定です。
日本政府は、上述の土地開拓に加え、UNDP/PAPPを通じた資金協力により、パレスチナ西岸地区およびガザ地区の給水インフラ整備にも、重要な役割を果たしています。パレスチナでは、地下水を汲み上げるためのインフラの非効率性やポンプ用の燃料価格の上昇により、水の値段が高騰しています。これが農産品の価格を押し上げ、農業部門の経済活動を圧迫しています。よって、給水インフラの整備を通じて十分かつ安定的な水供給を実現することが非常に重要です。
これらの給水インフラ整備に加え、行政による給水サービス提供能力の向上を目的とした技術面・組織面の能力強化にも取り組むことで、農業用水の汲み上げ・貯水コストの低減と、より効率的な水管理システムの実現が期待されます。このモデルの効果は、UNDP/PAPPによる西岸地区における同種の活動で実証されており、新たな給水施設を利用した農民の収益を40%向上させるという成果を上げています。
日本政府はさらに、UNDP/PAPPが実施する貧困削減に資する生産設備の拡張および更新事業にも資金協力を行っています。UNDP/PAPPは2008年、自己資金100万ドルに加え、日本政府より260万ドル、イスラム開発銀行より100万ドルの資金供与を得て、ガザ地区において「社会的弱者の社会参加支援プログラム」を始動させました。
同プログラムは、ガザ地区に暮らす社会的弱者の孤立とコミュニティの分断という問題に取り組むものです。社会的統合を促進すべく、緊急人道支援を必要とする、または紛争直後の状況下におかれた人々を対象に、1)障害者向け社会保障制度、2)高齢者の支援、3)女性が世帯主の貧困層の経済的自立支援、の3分野における活動に取り組んでいます。同プログラムの実施にあたっては、UNDPがガザ地区で実施し、障害者600世帯の支援に大きな成果を上げた経済自立支援プログラムの経験が活用されています。
2.ガバナンス
パレスチナのガバナンス分野に対する日本政府の支援には、民主的な組織・制度の構築、地方分権化、地方自治体の能力強化、若年層支援、和平・社会経済開発の促進と定着のための環境整備等に対する取り組みも含まれます。
これまでに実施された事業は、パレスチナ自治政府の能力強化、法曹・検察官・裁判所事務官を対象とする高等司法審議会を通じた法務研修の実施、新しい裁判事例管理システムの導入、裁判所の建設等、多岐にわたります。また、不利な立場に置かれた人々の司法アクセスにも支援を実施してきました。
日本政府はまた、固定資産税法の附則や関連法令の整備に取り組む財務省を支援しました。これには、固定資産税法を運用する同省および地方自治体の職員の能力強化の支援も含まれます。
3.インフラ整備
日本政府は、UNDP/PAPPを通じ、さまざまなインフラ整備事業を支援しています。これらの事業は、パレスチナ自治区の社会経済インフラの復旧を牽引し、パレスチナの人々の生活状況の更なる悪化を食い止めるうえで、非常に重要な役割を果たしてきました。インフラ整備は主に、教育、水、地方自治体設備の各分野で実施されています。
教育分野では、校舎・教室の新設および修復を通じ、初等・中等教育の質の向上に貢献しています。保健分野でも、病院や診療所の建設、能力強化や設備導入を通じ、保健医療サービスの利用拡大と質の向上に貢献しています。また、ラマッラの文化施設や各地における小規模なコミュニティ・センターの設置を通じ、文化交流、芸術鑑賞、学習の機会創出にも貢献しています。日本政府の支援はまた、イスラエルによるガザ地区侵攻が続くなか、被害コミュニティの家屋再建と、同再建作業を通じた雇用創出にも活用されています。
またUNDP/PAPPは、日本政府の「平和と繁栄のための回廊」イニシアティブの一環として、ジェリコ農産加工団地(JAIP)の整備を支援しています。JAIPは、パレスチナの民間セクター開発と、近隣諸国との関係強化に役立つものと期待されています。UNDP/PAPPのJAIP関連事業では、JAIPとジェリコ市内の野菜卸売市場を結ぶ新しい道路の建設と、管理ビルの再建も予定されています。
4.水と衛生
日本政府よりUNDP/PAPPを通じ、これまでにパレスチナに提供された水・衛生分野の支援は、総額約6000万ドルに達し、生活に不可欠な水と衛生サービスをコミュニティに供給するうえで重要な役割を果たしてきました。このうち、水供給ネットワークの拡張に約1140万ドル、汚水回収システムの設置に570万ドル、汚水処理プラントの建設に1480万ドル、ごみ処理管理システムの改善に2370万ドルの支援が実施されました。
これらの取り組みは、西岸地区およびガザ地区のコミュニティの脆弱性の克服に役立っています。例えばガザ地区に位置するラファハの1万世帯以上とベイト・ハーヌーンの5200世帯に対する緊急給水・インフラ復旧事業は、両地域の生活環境の改善に多大な貢献を果たしました。
この他、水と衛生分野における日本の主要な支援には、国境を越えた下水管理のための事業規模570万ドルのプロジェクト「信頼醸成のための排水溝整備計画」も含まれます。同プロジェクトは、被占領下パレスチナ地域とイスラエルの境界にまたがって存在する下水問題に対処するものです。境界地域の下水を管理するための暫定的な取決めが策定され、3か村で排水溝が整備されました。さらに、住民1万7000人の住居に排水設備が接続されました。将来的には、下水処理設備も整備される予定です。
また、日本政府は、「不発弾瓦礫除去およびゴミ処理事業」に約1800万ドルを支援し、公衆衛生の向上に貢献しています。
UNDPと日本政府とのパートナーシップ
アフリカ開発会議(TICAD)
2016年 8月 27日日本はUNDPにとり重要なパートナーです。日本はUNDPの通常資金に対する主要拠出国のひ とつであり、UNDP執行理事会で存在感を発揮してきました。また、UNDPは、貧困削減、平和への投資、持続的な経済成長の後押しといった日本のODA 政策における重点分野と課題を広く共有し、共通の目標の達成に向けて活動を行っています。
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「誘惑の山」から見たジェリコの街並み
「ジェリコの農産業団地」
ヨルダンのアンマンで開催された「西アジア・北アフリカ(WANA)地域フォーラム」のための国際諮問委員会に、ヨルダンのハッサン王子、アハティサーリ元フィンランド大統領、有馬龍夫特別大使と共に参加。 寸暇をさいてPLO自治区・ウエストバンク(ヨルダン川西岸)のジェリコに日本のODAで建設中の「平和と繁栄の回廊構想」(農産業団地建設)の現場を訪問した。 私には、22年前から今も続いているアフリカでの貧農の食糧増産運動の経験がある。「何か参考になることがあるのではないか」との思いで視察させていただいた。 この「平和と繁栄の回廊構想」プロジェクトは、日本のODAを活用し、イスラエルとパレスチナの共存・共栄に向けて西岸に農産業団地を建設。パレスチナ農民が生産する農産物・オリーブ、トマト、バナナ、ナツメ、オレンジ等に付加価値をつけ、ヨルダンを通じてサウジアラビアなどの湾岸諸国に輸出する基地にしようとするもので、日本の主導でイスラエル、パレスチナ、ヨルダンの地域協力を通じて民間セクターの活性化を促し、パレスチナ経済の自立を実現しようとする計画である。 西岸の面積は三重県の広さで、人口約234万人(うち難民75万人)。南北約130km、東西40~65kmの幅でヨルダン川が死海に流れ込む西側に展開されている地域である。 当日はヨルダン日本大使館・市川書記官の車で出発。30分ほどでヨルダンとイスラエルの国境にあるヨルダン川に架かるアレンビー橋に到着。ヨルダン側の出国手続きはいたって簡単。イスラエル側での手続きは小一時間かかった。イスラエル側では竹内大使、松田公使が出迎えてくださった。 西側の援助が不十分な中、パレスチナ西岸における日本政府のODAの活動は大いに評価されて良い。このヨルダン川に架かるアレンビー橋をはじめその他の橋も、日本政府ODAが建設したものである。 農産業団地建設予定地はアレンビー橋を渡り切って直線で約300mの場所に位置する。しかしここはイスラエル軍の管理地のため、一旦死海の方向へ南下し、更に迂回して北上することになる。 この直線300mの道路の軍管理を解除するためにはイスラエル政府の了解が必要であり、日本政府はこのプロジェクトの成功のため水面下で、イスラエル、ヨルダン、パレスチナ政府との合意形成に向け精力的に活動している。第一次計画での雇用8000人計画が順調に進展するとは思わないが、このプロジェクトは西側の援助が今一つ実現しない中にあって、評価も高く、特筆されるべき活動である。 短い時間ではあったが、イエス・キリストが洗礼ヨハネと別れ、荒野で40日間の断食、その上悪魔に試練を受けたとされる「誘惑の山」に登った。ケーブルカーで5分。何の変哲もない100~150メートルの荒れ山で、ユダヤ教の修道院の建物が2、3ヶ所岩壁にはりついている以外、宗教色は感じられなかった。ただ一つ、キリスト教信者の多い韓国人の巡礼者が多いのか、ハングル文字の案内版が目に付いた。 山頂から見る西岸は、ヨルダン川から幅約2kmほどは荒野であるが、外側には肥沃な土地が広がっている。ヨルダン川は思った以上に水量が少なく、水面の幅はわずか5~6mほどである。案内人によると、ヨルダン川の伏流水がヨルダン川西岸の肥沃な土地を潤しているのだろうとの説明であった。 一見、平和な土地のように見えるが、国境検問所では緊迫感が漂っていた。 イスラエルは男女ともに徴兵制度があり、男子は18~21歳の3年間、女子は18~20歳の2年間、兵役につく。国境警備は主に女性兵士が多く、背中にマシンガンを背負い、仏頂面で細かく慎重に手荷物検査を行っているのは、いつ自爆テロが発生するかとの恐怖感からと思われる。 ヨルダン側の入り口に比べ、あまりの厳しさに、イスラエル、パレスチナ問題の平和解決の困難さを垣間見た気がした。 |
「ジェリコの農産業団地」 [2009年01月14日(Wed)]
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http://blog.canpan.info/sasakawa/archive/1732
経済、産業活性化のための「平和と繁栄の回廊」構想実現に向けて
-パレスチナ自治政府のファイヤード首相が緒方理事長と会談-
2010年12月01日
ファイヤード首相(右)と緒方理事長
11月25日、緒方貞子JICA理事長は、来日したパレスチナ自治政府のサラーム・ファイヤード首相と都内で会談し、中東和平の現状およびパレスチナ支援について意見を交わした。
経済的自立を軸とした国づくり支援
ファイヤード首相
日本のパレスチナ支援の中心には、2006年7月に中東を訪問した小泉純一郎首相(当時)が提案した、「平和と繁栄の回廊」構想がある。この構想は、イスラエル・パレスチナ間の持続的な和平には「二国家構想」の実現が重要との前提に立ち、イスラエル、ヨルダン等近隣諸国との協力により、持続的な経済開発を伴う健全なパレスチナ国家を樹立しようというもの。持続的な経済開発のためには民間セクター、中でも農産業が主導的な役割を果たすと考えられることから、現在JICAは、パレスチナ自治政府との協力の下、ジェリコ地域で農産物加工団地建設のための支援を実施しているほか、自治政府の行政能力・社会サービスの強化、母子保健・リプロダクティブヘルスなどの分野でも支援を行っている。
会談冒頭、ファイヤード首相は、JICAの継続的な支援に対して謝意を表明した。これに対し緒方理事長は、「平和と繁栄の回廊」構想の中核事業であるジェリコ農産物加工団地の各種インフラ整備が進んでいることに加え、パレスチナ側の実施機関の能力強化を目的とした技術協力プロジェクトも進行しており、これらを通じて、今後もハード面・ソフト面双方で協力していく旨を伝えた。
続けてファイヤード首相は、将来のパレスチナ国家建設に向けた自治政府の制度づくり、組織能力強化を進めていきたいとの意向を述べ、ガザ地区での学校建設、自治政府への財政支援の必要性などについて説明。これらについては、今後もJICAと共に支援についての協議を行っていくこととなった。
東アジア諸国との連携による新たな支援
事実上中断しているイスラエルとの和平交渉についても会談に上った。ファイヤード首相は、交渉の再開には、イスラエルによる東エルサレム(注)を含む入植活動の全面凍結と、国際社会からの支援が必要であると説明した。これに対し緒方理事長は、入植地の現状への懸念と共に、交渉再開に向けた期待を示した。
Palolea is the first company that started operation in the Jericho Agro-Industrial Park which is the flagship project of the Corridor for Peace and Prosperity initiative proposed by Japan in July 2006 with the goal of regional cooperation, and the contract for the first tenant company can be called a remarkable step
日本は、パレスチナの国家建設に向けた協力として、前述の協力のほか、研修受け入れや専門家派遣等について、インドネシア、シンガポール、マレーシアといった東アジアの国々と共に取り組む構想を提案している。緒方理事長は、東アジア諸国は過去の経済発展の経験を有しており、これらの国々と連携してパレスチナの国づくりを支援していきたい旨を伝えた。これに対しファイヤード首相は、東アジア諸国からの支援はパレスチナ自治政府の制度づくり・能力強化に貢献するものであると、これらの国々とのパートナーシップ深化への期待を示した。
中東・欧州部
(注)11月8日、イスラエル政府は、帰属問題が未解決な東エルサレムで、ユダヤ人入植者住宅約1,300戸の新規建設を進める方針を発表した。
Jericho agro-industrial park (JAIP)
Location: JAIP is located on 615 donum area, in the south side of Jericho’s border from Al-Nabi Mousa Land, Al-Seeh area.
Overview: Jericho Agro Industrial Park (JAIP) is a part of the Japanese government’s initiative, “ the Corridor for Peace and Prosperity”: it is one of the most important projects in Jericho and Jordan valley province which aims to revive Palestinian valleys areas that are threatened of confiscation and settlement and thus JAIP will be an important model in developing economic projects and a success story of continuous support of all involved parties.
Goals: JAIP aims to create an attractive investment environment, and to organize the agro-industrial sector from being random to be structured and legal, in addition to generate 5,000 direct or indirect employment opportunities.
In addition JAIP will attract local and foreign investments related to agricultural industries in order to develop the agricultural sector in the province and to encourage farmers to increase their crops by absorbing the surplus in the industrial park factories.
Developer: Jericho Agro Industrial Park Company ( JAIP Co.) was chosen to be as the developer of JAIP, and the concession contract was signed on 12th of June 2012, based on PIEFZA law No. (10) of 1998 to operate and develop the park sponsor of H.E president Mr. Mahmoud Abbas.
Fund: the Japanese government through its initiative, “the Corridor for Peace and Prosperity”.
Target industries: any agri-businesses and business people working in the field of agri-businesses.
Achievements:
Water Tank:
A water pipe has been established from the municipality’s network to the industrial park (**km) and a tank with a capacity of 500 cubic meters has been established as well.
Waste Water:
Treatment plant for JAIP has been built by Japanese fund. adding to this, water catch basins, a pumping station and a waste water transfer line from the collection area in the industrial park to the treatment plant will be constructed.
Administration building:
The building is constructed on the 1,000 square meter width land by Japanese fund; it includes offices for PIEFZA and the developer, halls, cafeteria and financial offices to serve for the industrial park.
Access road:
The access road (4km) between the industrial park and city center has been constructed and a byway (1,300 meters) leading to the road 90 will be constructed to facilitate transportation and movement in and out of the industrial park.
Electricity:
A station for distributing and controlling electricity was constructed to serve for the project. a feed line (3km) will be connected to provide the park with capacity of 3 megawatt and two converters with capacity of 30 megawatt will be founded to serve the park; these converters will be connected with the main station through the internal rooms for electricity transformers which are prepared by the developer to supply the industrial facilities and the others in the industrial park.
Electricity main station
The internal rooms for electricity transformers
Hungers
Metal buildings with area of 8,000 square meters have been constructed to be rent by the investors.
JICA ジェリコ農産加工団地関連の協力