マタタビの葉って なぜ白くなる?? 170710Mon

ハンゲショウやマタタビの葉の白化

質問者:   会社員   ゆう
登録番号2458   登録日:2011-06-08

6月にはいると、ハンゲショウやマタタビの葉が一部白くなる現象が見られます。これは受粉を助ける昆虫に、花のありかをわかりやすくアピールしているということですが、この白くなる現象のメカニズムはどうなっているのでしょうか。
葉の表面の柵状組織から、この時期だけ葉緑素が抜けてしまう、とどこかで読んだことがあるのですが、これは本当でしょうか。元の緑色の葉にもどるようですが、やはり葉緑素がもとに戻ってくるのでしょうか。葉緑素はどこにストックされていたのでしょうか。
教えてください。よろしくお願いします。

https://youtu.be/k2bPq6e1paQ?t=3
ゆう 様
https://youtu.be/2Vsh9kKdNVU?t=10
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。植物の形態等に深い関心をもっておられること嬉しくおもいます。この質問には、特に葉の形態や発生の研究に造詣の深い東京大学の塚谷裕一先生にご回答をいただきました。

ご質問拝見しました。ハンゲショウのそれはいわゆる苞葉なので、仰るとおり、昆虫には名のありかを示すもの、一方マタタビの方は、花がなくても枝の先の方の普通の葉がそうなるので、茂み全体を目立たせているようです。

さてそこで葉緑素はどうなっているかですが、ハンゲショウの方は、近縁種のドクダミの花の白い部分と同じで、白くなっていて、その時には葉緑素がでていません。花びらと同じ状態ですね。ただし今し方、実物を確かめてみたところ、白い苞葉も、裏側から見ると緑のものがあります。断面を見ると、裏側の組織は緑で、表側の組織が白い状態です。いずれにせよ、この後、実の時期になるにつれて葉緑素が出てきます。白いときも緑の時も、細胞の中に葉緑体にあたるものはちゃんとありますので、あとはそこが発達して緑になるかどうかだけです。つまりどこかに完成した葉緑素をストックしておいて、あとからそこに持ってきたわけではなくて、遅れてその場で作っているわけです。

一方マタタビの方は、ちぎってみていただくと分かりますが、白い部分にもちゃんと緑の組織があります。ただ表面に厚ぼったい白い層があるために、下の緑が見えないだけです。厚化粧の状態ですね。近縁種のミヤママタタビはさらにこの上に紅が加わるので、艶やかになります。いずれも、あとから緑になるのはその白い層が緑になるようです。

なお緑でなかった組織が後から緑になる例は、わりによくあることで、身近なものでは例えばアジサイの花も、青や赤だったものが、実の時期には緑になります。クリスマスローズなどもそうですね。いずれも、花が開く前の蕾の段階の時には薄い緑なので、緑の蕾から緑が抜けた花の状態、そしてまた緑の実の状態、というサイクルになります。柑橘類の橙も、もともとは代々の意味なのをご存じでしょうか。あれも、緑だった若い実が冬に橙色に熟しますが、収穫しないで放置しておくと、初夏にまた緑に戻ることからの名前です。このように植物は、緑の色を作ったり抜いたりといったことを、かなり気軽にするものなのです。

塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科 教授)

JSPPサイエンスアドバイザー
勝見  允行
回答日:2011-06-13
https://youtu.be/2Vsh9kKdNVU?t=10