ベーシックインカムおさらい。 170923Sat

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111.最近、ネットやニュースでよく見かけるベーシックインカム。
これは所得保障制度の1つで、なんとなく意味は分かっていても、メリットやデメリットを正確に把握している人は少ないのではないでしょうか?

ベーシックインカムは社会保障制度や生活のあり方を根本から変えてしまうほどの影響力を持っており、日本も将来に向けて検討すべきだともされています。

この記事では、ベーシックインカムとは何か。
そのメリットとデメリットはどのようになっているのか解説してみます。

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★最新の情報を 探してみた。ベーシックインカム。色々な角度から、幾つかの興味深い記事が出てきた。 ベーシックインカムのメリットとデメリット。対策。どのような問題が出てきて どのように対応すれば良いかなど。様々な意見が出てきた。しっかり勉強しよう。高齢化社会に向かう日本では 導入を真剣に考える時期が来たと考える。ポルトガル・リスボンでのベーシックインカム国際会議に備えて 最近の情報を、ざっと調べて見た。

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ベーシックインカムとは何か?

ベーシックインカムとは、政府が国民の生活を最低限保障するため、年齢・性別等に関係なく、一律で現金を給付する仕組みのことです。

日本における現行の社会保障制度は、何か特定の事情が発生したときに給付される形で実現されています。健常で労働が可能な人は、基本的に社会保障制度の給付対象にはなりません。

例えば65歳を迎えると年金が、失業すれば失業保険が、生活できない人には生活保護があります。病気になると、健康保険から大部分の医療費が給付されるのも、社会保障制度の一環です。

このように、社会保障制度は特定の事情が生じて、生活に支障が出る、または負担が大きいときに補完する役割を持っており、誰もが平等に給付を受けられる制度ではありません。

ベーシックインカムは、これらの事情は一切考慮されず全ての人が平等に給付を受けられる制度になっています。

2016年1月にオランダで行われる実験

ベーシックインカムは、労働によって対価を得て生活するという、これまでの生活スタイルを完全に転換するものなので、その影響は非常に大きいと考えられており、メリットやデメリットは論じられても実際にどのようになるか結論は出ていません。

2016年1月に、オランダのユトレヒトという都市で、ベーシックインカムが実験的に導入されると発表されています。
この実験は、都市全体で行われるものではなく300人という限定的な規模ですが、その効果には注目が集まっています。

実験であるため、300人をいくつかのグループ分けして異なる条件で支給が行われ、無条件で支給されるグループには日本円で約12万円(妻帯者は約18万円)が支給されます。
その結果、人々がどのような行動をとるのか実験で明らかになると言われています。

 

フィンランドでのベーシックインカム導入は誤報?

先日、フィンランドで本格的に導入が決まったとニュースになりましたが、こちらは誤報とのことです。

今月、テレグラフやタイムズなど、伝統あるイギリスの新聞が、フィンランドで「ベーシックインカムの導入が決まった」と報じました。これは、誤報です。英字紙記者が、情報源のフィンランドの地方紙の記事を読んだ際に、フィンランド語の知識が十分ではなく誤解してしまったもののようです。
[参考]フィンランドでベーシックインカム導入と“誤報” 実際の進ちょく状況は?

しかし、上記記事内にも書かれてある通り、何らかの動きがあるのは確かなので、オランダの実験結果次第では導入されるかもしれません。

ベーシックインカムのメリット

ベーシックインカムは、少し聞いただけなら、所得の低い人や働けない人、もしくは働きたくない人にとって、夢のような話に感じるのではないでしょうか?

何事にもメリットとデメリットは付き物ですが、一見して現金のばらまきのように思えるベーシックインカムも、メリットがあるからこそ導入が検討されているのです。

残業代や給与問題がなくなる?

ベーシックインカムは、労働による所得の有無を問いませんから、支給される最低限の生活保障よりも豊かな生活を送ろうと思えば、働くことに制限はありません。逆に、支給額で生活ができるのなら、働く必要はなくなります。

それはつまり、生活苦から無理な残業をしたり、待遇が不利な非正規雇用でも働き続けたりする問題から解放されるということです。
生活保障はされるので、自分で必要なだけ労働していくスタイルを保てます。

残業代の未払い不当解雇による給与問題がなくなる(厳密に言うと支払わない事業者が減る訳ではありませんが)とされています。

ブラック企業が淘汰される?

ベーシックインカムによって、労働者は労働を選択できるようになり、苛酷な労働時間や賃金の未払いを行うブラック企業は、淘汰されていくと考えられています。
ブラック企業で働かなくても、支給されたお金で生活できるからです。

ただし、ベーシックインカムで支給されたお金は、その使い道も限定されません。
ということは、生活費に使わず浪費してしまう人も当然出てくるでしょう。そうなれば、生活するために労働するしかありません。

勉強やボランティアに時間を使うことができる

生活のために労働している人にとって、ベーシックインカムが導入されれば、働く時間が減り自由な時間が増えるのは確かです。
日本人は働き過ぎだと言われており、擦り切れるまで働いて迎える老後ではなく、充実した人生を送ることができるようになります。

勉強やボランティアなど自身が望む時間の使い方ができるようになります。

ベーシックインカムのデメリット

ベーシックインカムには批判も多く、それはデメリットが国を滅ぼしかねないと考えられているからです。デメリットに対する批判は、財源の問題、労働意欲の問題、経済的な競争力の問題に分けられます。

財源はどのように捻出するのか

ベーシックインカムが、多額の財源を必要とするのは間違いありません。一方で、日本の社会保障費は増加の一途を辿り、2013年度の総額は約110兆円で、そのうち医療の約35兆円を除くと、約75兆円が給付されています。

その全てが再分配されないとしても、1億2000万人に6万円を支給すると72兆円です。1人で生活するには不足しています。しかし、社会保障がベーシックインカムに一本化されることで制度上の効率は大きく上がり、削減されるコストを考えると、もう少し支給は上乗せできるかもしれません。

つまり、完全に生活できるレベルまで保障するには、税制で工夫が必要になり、何らかの仕組みを考えなくてはなりません。また、特に税を上げずにある程度までは可能なほど、日本の社会保障費は大きいと言えます。

税制による財源確保にはいくつか案があり、例えば、現在は最高45%の累進課税(所得に応じて税率が上がる課税方法)になっている所得税率を、収入に関係なく45%で固定するなどが考えられます。

しかし、低所得層が厳しくなるかというと、増税分よりもベーシックインカムによる収入が上回り、ベーシックインカムを必要としない高所得層は、元から高い税率で納税しているので、それほど影響はありません。

現行の社会保障費に、税制の変更を加えると、ベーシックインカムが全く実現不可能な話ではないとわかるのではないでしょうか。

働かない人が増える

ベーシックインカムで最も批判を受けるのが、働かない人が増えるという点です。
働かなくても生活できるのなら、誰も働く人などいないという論理なのですが、そう単純な結果にはなりません。

例えば、10万円の給料でギリギリの生活を送っている人が、ベーシックインカムで10万円支給されたとき、仕事を辞めてギリギリの生活を続けるでしょうか。むしろ、生活を豊かにするため、仕事を続けて20万円の収入で暮らしたいはずです。

では、100万円の給料で十分な暮らしをしている人が、ベーシックインカムで10万円支給されたからといって、仕事を辞めて10万円の生活を始めるでしょうか。こちらも答えはノーと言わざるを得ません。

ベーシックインカムによって、労働の一部は確かに失われるかもしれませんが、少しでも収入を増やしたい人は働くと考えられます。

経済競争力がなくなる

働く人が減って労働力が失われることによる産業の衰退、増税による物価上昇などで、ベーシックインカムが始まると、経済競争力がなくなるという懸念もあります。

労働力については、生活保障があることで、賃金が低くてもやりたい仕事を選び、嫌な仕事は敬遠されて賃金の上昇を招くといった現象も起こるでしょう。これまでよりも、賃金の高くなる仕事ではコスト高になります。

その代わり、賃金が低くなる仕事も生まれるのですから、こちらは生産力が高まり、バランスしだいだと言えます。

物価上昇については、税収をどこに求めるのかで変わり、法人税に求めると企業収益の悪化を伴い経済競争力は低くなりますが、個人所得税や消費税なら、物価上昇に直接つながる懸念はないはずです。

まとめ

年金の破綻や生活保護のほうが働くよりも高収入など、日本の社会保障制度はひずみが大きく、どこかの時点で変革をしなくては、少子高齢化・人口減少に耐えられないという指摘があります。

ベーシックインカムは大きな変革ですが、財源確保に課題も残し、その効果が未知数であるのは否めません。

しかし、現状維持では続かないのが明らかな以上、オランダの実験結果しだいでは日本も検討すべきでしょう。

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222.北欧フィンランドは、約540万人の全国民に月額800ユーロ(約11万円)の「ベーシックインカム」を支給する検討を始めた。2016年11月までに最終決定される見通しで、導入されれば世界初となる。

まだ実際に導入が決まったわけではないが、反響は大きい。日本でも今月このニュースが報じられると、インターネット上で「壮大な社会実験が始まった」「日本も導入を検討してもよい」などと称賛する声が上がった。
ベーシックインカムとは、就労や資産の有無にかかわらず、すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を現金で給付する社会政策である。社会保険など従来の所得保障がなんらかの受給資格を設けているのに対し、無条件で給付するのが最大の特徴だ。
全国民に漏れなく最低限度の収入を保障することで、「ワーキングプアなど従来の社会保障で救えなかった人々も助けることができる」と期待する声がある。
だが、本当にベーシックインカムで貧困層を救うことはできるのだろうか。
ベーシックインカムを支持する人々が、忘れてしまっていることがある。それは、貧しさを救うために本当に必要なのは、お金ではないということだ。必要なのは食品、衣類、住居をはじめとするモノである。お金を食べたり着たりすることはできないのだから。
ベーシックインカム導入後、支給された金額で必要なモノが必要な量だけ買えるのであれば、問題はない。しかし、もしベーシックインカムを導入した影響で国のモノを生産する力(生産力)が落ちてしまうようだと、話は違う。必要なモノが足りなくなり、手に入りにくくなってしまうからだ。
生産力にマイナス
実際、ベーシックインカムを導入すると、いくつかの理由により、生産力にマイナスの影響を及ぼす。
まず、働かなくても一定の収入を得られるため、勤労意欲が低下する。この指摘に対しては、「稼ぎが一定以上になると打ち切られる生活保護と違い、ベーシックインカムは所得水準にかかわらず支給されるので、勤労意欲を阻害することはない」という反論がある。

確かに、ベーシックインカムがたとえば1人あたり月5万円程度の比較的少額であれば、それが支給されたからといって、「もう働くのはやめて遊んで暮らそう」などと考える人はいないだろう。ベーシックインカムがこの程度の金額にとどまっていれば、生産力はさほど落ちないとみられる。
しかし、月々たった5万円では「生活に最低限必要な収入」とはいいにくい。ベーシックインカムとうたうからには、日本の場合、フィンランド並みの10万円超を念頭に、もっと上積みが求められるはずである。そして実際にもっと多い金額が支給されれば、文字どおりそれがあれば最低限の生活はできるのだから、働かない人は確実に増える。これは生産力を低下させる。
ベーシックインカムを支持する人のなかには、ホリエモンこと堀江貴文氏のように、「世の中には働くのが好きで働いているような一握りの人がいて、イノベーション(技術革新)を生み出し、社会の富を作り上げている。だから、働きたくない人は働かなくてもいい」という意見もある。しかし、この考えも生産力のことを忘れている。
なるほど、商品のアイデアを生み出すのは、たいてい一握りの才能ある企業家であるが、それを現実の商品として製造・販売する仕事は、一握りの企業家だけではできない。多くの働き手がいる。ふつうの人々がベーシックインカムに満足して働かなかったら、生産力はガタ落ちとなり、社会を物質的に豊かにすることはできない。
貧しい人々をもっと貧しくベーシックインカムが生産力を衰えさせる原因は、勤労意欲の低下だけではない。もし財源として増税が必要になれば、それも生産力にマイナスの影響を及ぼす。
現代経済の高い生産力を支えるのは、製造の機械化である。増税が実施されると、機械化投資に回す資金が減り、生産力の低下につながる。
企業の投資に直接響く法人税は、さいわい減税の議論が進んでいる。だが消費税や所得税など個人が負担する税金でも、増税されれば投資に影響する。個人は貯蓄から銀行預金や株式購入を通じ、企業に資金を供給しているからである。増税で個人に貯蓄の余裕がなくなれば、企業に流れる資金は減り、生産力の低下に結びつく。
資産税や相続税など富裕層への課税が強まれば、堀江氏が述べたような一握りの才能ある企業家が、日本を離れてしまう恐れもある。これも生産力にはマイナスだ。
ベーシックインカム導入に伴い増税が実施される可能性は大きい。従来の社会保障を撤廃することで浮く財源もあるが、それによって支給できるベーシックインカムはせいぜい月5万円程度といわれる。前述のように、わずかそれだけでは「生活に最低限必要な収入」とはいえないとして、上乗せの圧力が強まるだろう。そうなれば増税は避けられない。
しかも厄介なことに、「生活に最低限必要な収入」は、本来の最低限を超えてどんどん膨らむ恐れがある。政治家が有権者の人気を取りたがるからである。
従来の社会保障では、社会保険料の負担を抑え有権者の人気を取るため、歴代政権によって税金が安易に投入されてきた。ベーシックインカムの額が国政選挙のたびに引き上げられる事態はたやすく想像できる。
有権者は一時喜ぶかもしれないが、増税や勤労意欲の低下で生産力が落ち、モノ不足で物価が上がり、ベーシックインカムのさらなる引き上げや他の社会保障の復活が必要になるという悪循環に陥るのは確実である。
貧しい人々に必要なモノを行き渡らせるためには、まず十分な量のモノを生産しなければならない。ベーシックインカムは、従来の社会保障と同じかそれ以上に国の生産力を衰えさせ、貧しい人々をむしろもっと貧しくするだろう。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)ニュースサイトで読む: http://biz-journal.jp/2016/01/post_13130_3.html
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1. ベーシックインカムが世界を席巻する

民進党から次期衆院選目指して活動中の静岡2区の松尾勉です。現職ではありませんが、いよいよベーシックインカムが世界を席巻しようとしている中、いても立ってもいられず世界に先駆けて日本がベーシックインカムを導入するべく、具体的な提案をしていきます。おそらく我が国最初の包括的提案となります。

そもそもベーシックインカムとは何か。「最低限の生活保障」や「基本所得の保障」的意味合いでとられる方が多いと思いますが、今のところ明確な定義はありませんし世界で導入している国もありません。最も具体化に近いのはフィンランドであり、毎月560ユーロ(約7万円)を2,000人に配布するという導入試験が行われています。これは行き過ぎた行政の肥大化を抑止するのが一義的な政策目的と言われています。

また、アメリカの有名新興企業の経営者(例えばFacebookのマーク・ザッカーバーグ氏やテスラのイーロン・マスク氏)がベーシックインカム導入に積極的なメッセージを発信していますが、その理由はAIやロボット発達に伴う富の偏在化への防波堤という意味合いが強いようです。

2. 日本こそ、ベーシックインカム導入を

しかし実は、このベーシックインカムを掘り下げていくと日本こそ最も劇的な効果が見込めることが分かってきます。とりわけ、高齢化に伴う社会保障政策の限界、個人消費が伸び悩む経済状況の改善、格差の是正に大きく寄与する政策となりえます。また、「成長か分配か」、「積極財政か財政再建か」という二項対立を超えて「成長と分配」「積極財政で財政再建」の両立をもたらし、行政改革まで可能となるのです。

やや先走りましたが、なぜ日本でベーシックインカムなのかを今一度整理します。

従来、我が国は成長一辺倒でその果実を頼りに社会保障や福祉の充実を図ってきました。しかし人口ボーナスのある時代が終わり、逆に人口減少・高齢化社会に突入していきます。働き手が一手に社会を担う仕組みは限界に近づいています。現に、いわゆる生産年齢人口(15~64歳)は既にピークから600万人以上減少し、あと30年もすると高齢者割合とイコールになります。働き手が社会の担い手とする発想から、全ての人が社会の担い手を探ることが社会存続の近道となります。

同時に、日本だからこそという積極的な意味合いもあります。従来から「お互い様」の文化を持つ我が国の伝統。しかし、資本主義によって格差が広がり我が国の良さを打ち消してしまいました。加えて権力と既得権の癒着に伴う政治・行政不信。こうした不信感を一掃し、お互い様を取り入れた新資本主義を実現し行政の透明化も果たす、それがベーシックインカムの威力なのです。

3. 全成人に毎月8万円配布のベーシックインカム

具体的な提案に移ります。その骨子はタイトルのとおり「全成人」に「毎月8万円」を配布するというものになります。

 

◎配布の内容

対象:全成人国民(約1億人)

金額:毎月8万円(年間96万円)

対象に子どもを含める案も考えられますが、後ほど触れるようにベーシックインカムは万能ではなく、子育てや教育、医療や介護制度などは別途必要となります。そのため、今回の提案では分かりやすく成人を対象とする制度としました。

また、月8万円の提案の理由は、年金(基礎年金が月約6万5千円)や生活保護を念頭におきつつ、税による追加負担(後述)軽減も加味した結果、現時点ではこの額となりました。

さて、この制度には当然財源も必要です。年間予算は約100兆円。以下では、財源とともに行政の透明化もセットで示していきます。

◎制度の財源など

行財政の改革:公務員給与の一律削減、省庁や役所の整理統合、生活保護制度廃止、基礎年金はベーシックインカムに置き換え(厚生年金は残す)

消費税の変更:8%から20%へ、全体を個人ベーシックインカム税に変更

法人への新税:法人ベーシックインカム税創設(従業員数に応じた一段目(約月4万円/一人)と会社規模に応じた二段目(大企業課税))、最低賃金や雇用保険の廃止・見直し、年金保険料企業負担の一部廃止、配偶者控除等の廃止

以上が制度の財源になります。生活保護や基礎年金制度、最低賃金、雇用保険や配偶者控除など生活を支えるための従来の仕組みはベーシックインカムにより代替されますので廃止・見直しとなります。また公務員給与も一部ベーシックインカムで代替しますので減額、さらには不要となった省庁や役所は整理統合します。これによる効果は、直接的な財源としても10兆円規模となる見込みです。

また、全ての人が社会の担い手である以上、財源の半分は消費税(個人ベーシックインカム税に変更)でまかないます(税率20%)。この場合、月20万円お買い物する人は納税が4万円となり8万円のベーシックインカムでお釣りがきますが、月40万円お買い物する人は納税が8万円となりトントンとなります。すわなち、高額な出費をするほど負担は重くなりますが、この部分により累進性を担保することになります。なお、軽減税率のような複雑な仕組みは採用しません。

さらに企業においては、最低賃金や雇用保険、一部年金保険料等の負担を軽減する代わりに、従業員数に応じたベーシックインカム税を創設します。また大企業には二段目として更なる課税を検討します。これには、既に述べたとおり、今後のAIやロボット等の発達に伴う富の偏在化を防ぐという意味合いもこめられています。

4. ベーシックインカムの効果

以上が簡単ではありますがベーシックインカムの骨子となります。この制度導入に伴い、直接的・間接的問わず様々な効果が生まれます。

① 個人消費の喚起

個人消費の伸び悩みは日本の大きな課題でした。ベーシックインカムの導入により、特に若年層の個人消費は劇的に増えるものと考えますし、基礎年金制度が税方式のベーシックインカムに変更されることにより将来不安も解消されます。

② 社会保障改革

年金政策は、高齢者の増加と生産年齢人口の減少におびえる必要がなくなります。引き続き医療や介護の課題は残るものの、社会保障政策の課題解消の一手となります。

③ 行政改革

税金の行く先に憤りを覚える人は多いことでしょう。天下りや消えた年金、昨今の学校法人の問題等。ベーシックインカムはこの「中間搾取」を減らすことに貢献します。例えば生活保護や基礎年金制度が廃止され窓口業務が不要となります。税務署や労基署、社会保険機構、市役所などの業務が整理統合されることになります。

④ 格差対策

低所得者対策としても、ベーシックインカムは最低限の生活保障になりえます。またブラック企業に勤める人々を解放し、雇用保険の期限切れを心配する必要もなくなります。なによりも自らの納税を自らに還すことが土台であるから配布されるものに恥を感じる必要がありません。尊厳ある格差対策となります。

5. ベーシックインカムに向けてクリアすべき課題

以上のような効果がある一方、懸念もあります。例えば、労働意欲が低減するのではとか、払った税金を還元するなら払わなければいいではないか、などです。

確かに、勤労意欲については影響が懸念されます。現にフィンランドで行われている社会実験は勤労意欲の検証も兼ねるものなので注意深く見守る必要があります。さらに、我が国でもより確かな検証を制度導入前に行う必要があると考えます。

また、そもそも還元するくらいなら払いたくないという考えもあります。しかし、高齢化や人口減少は待ってくれません。財源がなければ制度を縮小するしかありませんがそれでは格差は拡大し社会不安が増大する。現状維持でも縮小不均衡でもない第三の道、それがベーシックインカムなのです。

これだけ大きなモデルチェンジですので、論点は多岐に及びます。例えば、累進性の確保を含めた高額所得者への対応、納付済年金の対応、物価上昇との関係、既存財源及び政策との関係等々です。これらについてもまだまだ詰めていかなくてはなりませんが、既に世界は、課題解決の手段としてベーシックインカムを見出し始めています。課題先進国の日本が資本主義を深化させ、いち早く人口減少・高齢化社会に合った社会像を示すとしたら、ベーシックインカム導入が最短の近道となります。

以上が、ベーシックインカムの具体像となります。今後より多くの方の意見を伺いながら、ベーシックインカム導入に向けて走り始める覚悟です。是非多くのご意見をお寄せください。

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444.清水 康之 · 

ベーシックインカムの考え方は、複雑きわまる仕組みになってしまった社会保障システムを一気に簡略化できる可能性があり、真剣に検討すべき課題であろう。ただし、うまく行きそうだ、ではダメである。これは税制などにも大幅な変更を求めるし、今の年金制度をどうするかなど影響する範囲が途方もなく広いからだ。また、財源としてすぐに消費税が出てくるが、本来、国が財政難になっている理由の一つが「利子」であり、もう一つが税収減にある訳で、これらを解決しないと消費税がどこかへ消えてしまう恐れがある。北欧で実験的とはいえベーシック・インカムがうまく動いた背景には、政府税制に対する信頼がある。日本では消費税を社会保障に使うと言いながら、財務省のデータを見る限り消費税は税収に結びついていないので(一般会計における歳出・歳入の状況という財務省データを見れば消費税導入以来、国の税収が全く伸びてない事がわかる)、消費税を20%にしてもどこかがそれで得をすると国民は見抜くだろう。税制に関して言うならきちっと富裕層と大企業に課税すべきだ。消費税も今のような仕入先まで絡ませて不透明にするのではなく、小売段階での物品税として明朗会計にすべきだ。アベノミクスはトリクルダウンなどとデタラメを言って大企業が儲かれば従業員も豊かになるという大嘘をついてきたが、実際には大企業が合理化で利益を上げてもその分、従業員が解雇されるだけの話になっているのは、例えばアマゾンの自動化倉庫を見れば分かるだろう。真剣に検討すべき範囲は広く深い。簡単な話ではない。
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555.ベーシック・インカムを強く推奨しています。

課題は山積みだと思いますが
最もシンプルで最も優れた社会保障だと思います。

一人一人に自由な時間を生み出し、自由な生活を実現すると思います。

自分にお役に立てることがあれば、言って頂きたいです。

基本的には雇用がAIやロボットに奪われていけば
おのずとベーシック・インカムを導入せざるをいけないと思いますが。

日本で全世界で最も早く導入して
国際競争においてトップに出ることができたら良いと思います。

一人一人の自由な時間が増えるということは
最先端の技術開発に使える時間も増えてくると思いますので。

高井千鶴子 · 

素人のコメントですみません。
BIは AI 高齢化 うつ病 など、今の時代を 収束させると出て来る 正しい順路では無いかと 漠然と 期待しています。
できれば 一人勝ちしているところから もっと財源を集めて 金額を上げて欲しいですが、、、ご活躍に期待いたします。幸せな 人を 増やしてください。

青木 哲

少なくともベーシックインカム分のキャッシュフローは増えることになり
今以上のお金の流れが発生しそうですね。
来月も8万円/一人の収入が貰えるとなれば、消費も少なくとも増える。
お金持ちは8万円をパッとぜいたくに使うから装飾品なども活況になりそうだ。
そもそも物価(GDP)も上がりそうだ。
副作用はハイパーインフレ!? はたしてハイパーになるかなぁ??
消費税率と消費金額で適正なベーシックインカムの支給額を導けるんですね。

川上 嘉一 · 

地方小都市で特区として実験とかはできないんですかね

片喰藤火

貧乏な文芸活動に身を置く者としては、ベーシックインカムは魅力的に思えます。
しかし、残念ながらベーシックインカム制度が日本で可決される事はないでしょう。仮にベーシックインカムが施行されたとしても、それは何十年も先の話で、生きてる間は無理かなと思います。
まずはあなたの出来る範囲で貧困や低賃金で苦しんでいる人を救ってみては如何でしょうか。例えば、あなたが自分で起業して沢山の人を高給で雇ったり、
自分で投資して沢山の会社を助けたり、自分でお金を使って国民の利益に貢献したり……。ベーシックインカムの事を議論する事は大事な事ですが、それと並行してやれることは沢山あると思います。
その中の一つに僕の本を購入すると言う選択肢があるかも知れませんし、僕の本の事をツイートしてくれたりする選択肢があるかも知れません。
その結果、僕がベーシックインカム以上に収入が増え、あなたが救えた一国民になれるかも知れません^^)
そういう細やかな善意の方が、出来るかどうか分からない制度を呼びかけるよりも国民の支持を得られる未来に繋がるのではないでしょうか?もっと見る

Matu Maro · 

biは日本を救うと信じているよ。再チャレンジ社会をかけごえだけに終わらせないためにも、生活保護だけでもbiに切り替えてほしい。いっこくも早く
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666.

STEPHEN LAM / REUTERS
Facebook CEO Mark Zuckerberg is seen on stage during a town hall at Facebook’s headquarters in Menlo Park, California September 27, 2015. REUTERS/Stephen Lam/File Photo

Faebookのマーク・ザッカーバーグCEOが7月5日、ベーシックインカムに関する持論を投稿した。アメリカのアラスカ州の事例を紹介しながら、「教訓になるかもしれない」などと述べている。

この日、ザッカーバーグ氏は週末に妻のプリシアさんとアラスカ州を旅行したとコメント。「アラスカの社会的セーフティネットプログラムは、私たちの国にいくつかの良い教訓を示してくれる」として、州の石油事業によるベーシックインカムについて紹介した。

アラスカ州は石油資源による公益ファンドの運用益から、年間一人当たり1000ドル(約11万円)を全住民に給付している。ザッカーバーグ氏は州が全て石油事業の収益を使うだけではなく、住民に還元している点に着目。Facebookを立ち上げた初期の段階で学んだ教訓を思い出したという。その教訓とは次のような内容だ。

「組織は借金をしているときと、収益が高いときとでは考え方が大きく異なる。お金を失っているときは、考え方は生き抜くことに依存する。しかし、収益を上げているときは、将来について自信を持っているし、投資をしてさらに成長する機会を探す」

ザッカーバーグ氏は、このベーシックインカムが、「精神的な勝利を作り出した」として、「他の国にとっても同様の教訓になるかもしれません」などと述べた。

ホワイトハウスは2016年、AIやロボットが数年間で何百万という雇用を人々から奪う可能性があるという報告書を出しており、すべての人々に生活費を供給する「ベーシックインカム」の導入について関心が高まっている。テスラのイーロン・マスクCEOは2月、「今後自動化で仕事が失われていくことを考えると、普遍的なベーシック・インカムが近い将来必要になるだろう」と、セーフティネットのあり方について発言している

ザッカーバーグ氏のベーシックインカムに関する言及は、5月に母校ハーバード大学での卒業式スピーチに続いて2回目だ。アラスカ州のベーシックインカムについては、州の配当金が貧困線の2〜3%より大きいとする調査があるが、批判もある。アラスカ大学のスコット・ゴールドスミス教授は、アラスカ州では配当金が一括で支払われるため、生活の維持ではなく、耐久消費財の購入に使われていると指摘する。ゴールドスミス氏は、一度配当金の支払いを始めると、それを止めることは難しいなどと述べた。

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777. ベーシックインカム

 日本はじめ世界各国で社会保障費が膨らむ中、最低限の所得を国が国民に保障する仕組み「ベーシックインカム」(基本所得)が注目されている。貧富の格差や貧困を減らし、豊かな福祉国家を目指す。一見、夢のような話で、「究極のばらまき策」との批判があるが、欧米などでは導入実験も始まっている。どこまで現実味がある政策なのだろうか。

「怠惰な人が増える」は誤解 ルトガー・ブレグマン 歴史家、ジャーナリスト

ルトガー・ブレグマン氏

 私がベーシックインカムの論考を書き始めたのが2013年。翌14年、オランダで出版した本が英訳され、現在、日本を含む20カ国以上で出版が決まった。想像を超す反響の広がりに私自身が驚いている。なぜ、注目されているのか。恐らく昨年のブレグジット=英国の欧州連合(EU)離脱=決定やトランプ米政権の誕生、世界規模での難民・移民の増加という現実に不安を抱いた若者たちが従来の政治にはない新しい制度を模索しているからだろう。その具体例として多くの人たちが耳を傾けてくれているのだと思う。

 私の唱える「ユニバーサル・ベーシックインカム」の狙いは単純だ。基本的な生活を維持できるだけの最低限の収入を国が支給することで、すべての人が「貧困」から抜け出し、人間的な生活を過ごせるようにする。発展途上国や貧しい人だけを対象としたものではなく、金持ちを含めたすべての人に無条件に一定の「フリーマネー」を払うのが特徴だ。月額いくらかはそれぞれの国の経済力によるが、例えばオランダや米国のような国なら1000ユーロ(約13万円)程度あれば住宅費や食費の多くに充てることができる。

 国民全員に受け取る権利があるため、現在の生活保護のような救済や施しという後ろめたさを感じることもなく、人々は自由にお金を使うことができる。もちろん財源は税金などだが、現在、福祉政策にかかっている予算を再編成することで実現は可能だ。こうした業務に当たっている職員の煩雑で時に過酷な労務も必要なくなる。就労の有無にかかわらず一定の生活費が確保されているという安心感があれば「貧困」への恐怖心がなくなり、さまざまな精神的な苦痛からも解放されるだろう。

 ベーシックインカムによって貧困をなくすという考えは新しいものではない。すでに1960年代に米国で考えられ、フィンランドやカナダの一部では今年、実験が始まった。恐らく、多くの人が持つ漠然とした懸念は「フリーマネーを支給しても、怠惰で浪費する人が増えるのでは」ということだろうが、そうではないことは実験によって証明されている。人類というのは本質的に常に何かを生み出そうとする、真面目で創造的な生き物なのである。恐らく世界の国の中でそのことを最も実感しているのは日本人だろう。

 ベーシックインカムと同時に「週15時間労働」の目標も掲げている。週5日間働くとすると1日3時間労働。それ以外の時間は本当に自分がやりたいことを楽しむ。趣味や家族との時間に充ててもいい。働きたければ追加の仕事をすればいい。ワークシェアをしながら複数の仕事を持ってもいい。

 ともかく、現在のように長時間労働を強いられ、休日もテレビを見るくらいしかないほどに疲れ果て、生きがいさえ見いだせないような過労社会をなくすことこそ先決なのだ。そのために基本となる収入を国が保障する。実験的であっても、こうしたアイデアを取り入れる政府が出てきてほしい。いつの日か、人類は本当のユートピアに到達できるかもしれないのだ。【聞き手・森忠彦】

個人の多様な生き方保障 山森亮・同志社大教授

山森亮氏

 ベーシックインカムをめぐる最近の議論で抜け落ちているのは、ベーシックインカムを求める声の多くは、1970年代の英国の女性解放運動など、女性たちの間から起きた事実だ。彼女らは社会保障の代替を求めたのではない。家事や育児などの不払い労働を主に女性が担い、結果として女性の地位が不安定化していることに異議を唱え、労働という概念の再定義を行ったのだ。性別役割分業を当然視する制度のあり方によって人々が分断されている現状を問い直し、その束縛から自由になろう--。ベーシックインカムには、そんな希望が込められていた。

 高度経済成長期の日本では、女性は結婚したら家庭に入り、主婦になるという生き方へと誘導された。86年の男女雇用機会均等法施行は、その抑圧から女性たちを解放するはずだったが、実際は女性たちは男性並みに働かされて疲れ切り、現在の若い女性たちの間では専業主婦願望が増えている。現在の日本は欧州以上にベーシックインカムを必要としている。

 ベーシックインカムの特徴は(1)所得に関係なく無条件で支給する(2)世帯でなく個人単位で支給する--ことだ。これは「どんな生き方をしていても、その人の『生』をまるごと肯定する」という意味を持つ。生活保護のように受給に条件がつく制度では、個人の生き方が行政の管理や監視の対象になる。特定の家族の形が社会規範と化し、「交際中の男性に養ってもらえ」「これ以上子供を産んだら保護を打ち切る」といった話に結びつきかねない。世帯単位の制度は構造的に性差別の助長という問題をはらむ。所得制限のない個人単位での給付が必要だ。

 ベーシックインカムは男性も解放する。家事労働やボランティアなど社会に必要な不払い労働に男性が就くことが選択肢に入る。「失職したら生活できない」という恐れから解放されれば、労働者の力が増す。企業側も人材確保に向け、より良い労働環境の整備などの対応を迫られる。ベーシックインカムは個人の多様な生き方や働き方の保障につながるのだ。

 そもそも生活保護の捕捉率はわずか15%程度。生活保護予算は本来、現在の6倍程度必要なはずだ。ベーシックインカムに向けた第一歩として、捕捉率を上げるか、生活保護水準以下で働きながら保護を受けていないワーキングプアの人たちが給付を受けやすい給付つき税額控除を導入するか、どちらかが早急に行われるべきだ。

 ただし、ベーシックインカムの全面的な導入を一夜で行おうとするのは、税制などの大幅な改革が必要なので非現実的だ。児童手当から所得制限を撤廃すると同時に、児童を実際に養育している人を対象とする給付付き税額控除の導入、基礎年金の税財源化などを通じて漸進的に進めるべきだ。

 私たちは従順な労働者になることを求められ、自分の人生を生きることを無意識に抑圧してきたのではないか。もし生活のためだけに働く必要がなくなったら、自分は何をしたいのか。ベーシックインカムの議論を「生き方への問いかけ」と考えてみてほしい。【聞き手・尾中香尚里】

純粋な形での実現は無理 権丈善一・慶応大教授

権丈善一氏

 社会保障の目的は自立支援、社会参加への支援であり、生活リスクに備える保険だ。この点について誤解があるから、社会保障を、「捨てぶち」のように毎月定額の現金を与えておけば済むという感じのベーシックインカムに置き換えようと言う人が出てくるのだろう。

 ベーシックインカムが好きな人は、その導入により福祉に関わる費用は不要になると主張する。だが、例えば毎月10万円を1億2000万人の国民に配るには年間144兆円の財源が必要になる。国税収入は50兆円台しかない。社会保険料も含めた社会保障給付費は年120兆円ほどだが、このうち医療や介護、保育などの現物給付費用は144兆円には入っていない。さらに、毎月定額の現金給付では保険としての役割が吹っ飛ぶ。純粋な形でのベーシックインカムの実現は到底無理な話である。

 1960年代、英ケンブリッジ大の経済学者、ジェイムズ・ミードは学生たちに、所得に比例した税と、均一に配られる給付、つまりベーシックインカムの経済効果を考えるよう指示した。学生たちは実現不可能な規模の費用がかかると分かっていたので、当時からベーシックインカムの「変種」探しが続けられた。

 教え子の一人で、社会保障研究の世界的第一人者になったアンソニー・アトキンソンは、市民権に基づき国民に例外なく配るベーシックインカムでなく、社会保障を補完する制度として、社会参加に基づいて支払われる参加型所得を言うようになる。参加は広範に社会的な貢献をすることとされ、社会保障が人々の自立支援、社会参加を促す政策であることを理解した上での提案だ。アトキンソンは児童手当も子ども向けベーシックインカムと呼んでいて、そういう意味での変種はあり得る。

 だが、現在、フィンランドで試験的に実施されているものをベーシックインカムの導入実験と呼ぶのは、何も知らない人たちに誤解を与える。実際は、複雑になり過ぎた失業関連給付を整理し、就労を阻害するインセンティブ(誘因)を弱め、役所の組織や手続きも簡素化しようというものだからだ。

 ベーシックインカムがあれば、社会的に価値があっても所得が低い仕事やボランティアなどに取り組むインセンティブが高まるという人もいる。だが、純粋な形でのベーシックインカムの実現は財源的に不可能な話だから、「仮にできるとすれば」と想定して、その先をいろいろ論じ合っても意味がない。

 ベーシックインカムの話はこれからも続くと思う。社会保障の制度や歴史という面倒なことを勉強しなくても社会保障の議論に参加した気分になるようだからだ。社会保障とは日ごろ無縁の編集者たちによって雑誌や新聞で特集も組まれれば、本も出版されるだろう。その論議が社会保障政策に影響を与えることはないが、授業でベーシックインカムを好きな先生から仮想敵とみなされ、実態以上にヒール役に仕立てられた社会保障の話を聞かされる学生たちはちょっと可哀そうだ。社会保障そのものも可哀そうか。だからこうして時々助けに行かないと。【聞き手・山崎友記子】


個人に無条件で

 ベーシックインカムは世帯でなく個人に無条件で毎月一定額を支給する。過去、カナダの州などで試行されたことがあるが、フィンランドで今年1月から国レベルでの導入実験が始まった。失業者から2000人を選び出し、月560ユーロ(約7万3000円)を2年間支給する。半年後調査では就職活動中の人が増えたという。一方、「労働意欲をそぎ、財政を圧迫する」との反対論も根強く、スイスでは16年に国民投票で7割以上の反対多数で導入が否決された。


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 ■人物略歴

Rutger Bregman

 1988年オランダ生まれ。ユトレヒト大で歴史学専攻。広告収入に頼らないネットメディア「デ・コレスポンデント」で発言。ベーシックインカムを取り上げた「隷属なき道」(文芸春秋)を刊行。


 ■人物略歴

やまもり・とおる

 1970年神奈川県生まれ。京都大院修了。東京都立大、英ケンブリッジ大などを経て現職。専門は社会政策、オーラル・ヒストリー。著書に「ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える」。


 ■人物略歴

けんじょう・よしかず

 1962年福岡県生まれ。慶応大大学院博士課程修了。専門は社会保障、経済政策。社会保障の教育推進に関する検討会座長などを歴任。近著に「ちょっと気になる社会保障 増補版」。

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直接民主制ベーシック・インカム国民投票、敗者にも満足の色


Bruno Kaufmann
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ベルンの連邦議事堂前で行われたベーシック・インカムをめぐるキャンペーン
800万枚の5ラッペン硬貨の海を泳ぐ(1スイスフランは100ラッペン)。ベルンの連邦議事堂前で行われたベーシック・インカムをめぐるキャンペーンは、世界中のメディアで報道された(Stefan Bohrer / Flickr)

あの国民投票からおよそ1年。論議を呼んだイニシアチブの主題「最低生活保障(ベーシック・インカム)」がスイスで話題になることは少なくなった。だが、どの国も同じというわけではない。例えばフィンランドは試験的にこの制度を実施中で、ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州はベーシック・インカムを連立協定に取り入れた。また、デジタル時代を代表する米国の2大人物も、このアイデアを支持している。

 「第601番」に割り振られたこのイニシアチブは、連邦内閣事務局が管理するスイスの国民投票史に明白な敗北を記した。2016年6月5日に行われた「無条件の最低生活保障イニシアチブ」の投票では、賛成票がわずか23.1%にしかならず、約77%が先見の明にあふれるこのコンセプトを退けた。

国内の全26州のうち、この憲法改正案に対し、過半数の賛成を得た州は一つもなかった。その主な内容は、必要に応じて支給する現行の社会保障に替わり、居住者全員に一定のお金を支給すること。言い換えれば、国民全員が無条件で月々2500フラン(約28万円)を受け取れるというものだった。

結果はさんざんだったにもかかわらず、イニシアチブの発起人は歓喜した。そのため、周囲には驚きと混乱が広がった。「民主主義は福引ではない。議論はこれからも世界中で続く」。イニシアチブを主導したダニエル・ヘニさん(51歳)はそう語った。

この「成功多き敗北」から1年以上が経った今も、ヘニさんの見解は変わっていない。スイスインフォに対し、当時の投票結果は尊重すべきものだと語る。ヘニさんは、00年からバーゼルでスイス一大きなカフェを営む。「最低生活保障は社会的な思いやりとリベラルな思考を結びつける」と主張する一方で、スイスではベーシック・インカムがあまり話題に上らなくなったことも認める。

ダニエル・ヘニさん
ダニエル・ヘニさん(Keystone)

他国は違う。「あのイニシアチブは、国際的な議論に重要な刺激を与えた」と言うヘニさんは、特に欧州のドイツ語圏からよく講演に招かれる。芸術家で映画監督のエンノ・シュミットさんを含むイニシアチブの共同発起人らは世界を飛び回り、ベーシック・インカムの国際ネットワークを結ぶ重要な役割を果たしているという。

民主主義は社会の鏡

ヘニさんは、「ベーシック・インカムというアイデアと現代的な直接民主制の実践は類似している」として、イニシアチブは比較的成功をおさめたと分析。「両者とも、右やら左やらのイデオロギーを超えた自己決定の問題。民主主義は社会の鏡だ。自分では何も求めず、人々が求めているものを映し出す」

「習熟した直接民主制のおかげで、スイスでは仕事と個人の自由をめぐる軋轢について議論できるようになった」とも。そんなヘニさんと歩みをともにするベーシック・インカム推進派は、マスコミに効果的で、世間をあっと言わせる大掛かりなキャンペーンをいくつも成功させてきた。13年10月4日のイニシアチブ提出の際に行った、シンボル的なアクションもその一つ。ダンプカーに積み込んだ5ラッペン硬貨(1フランは100ラッペン)をベルンの連邦議事堂前にどさどさと山積みにしたのだ。ピカピカと金色に輝く小さな硬貨は800万枚。スイスの全住民に1枚ずつ行き渡る計算だ。

ドイツの首都ベルリンではスイスの国民投票の1週間前、ブランデンブルク門の真ん前に「What would you do if your income were taken care of?」と書かれた長さ450メートルもの巨大な横断幕が掲げられた。「収入が確保されたとしたら、あなたは何をしますか?」。世界に向けた問いかけだった。

これらの出来事から分かるのは、スイスでイニシアチブを起こした人々がベーシック・インカムに関する国民的議論を誘発し、国際的な共鳴を呼び起こしたということだ。最近では、米国の新しいデジタルテクノロジー界の双璧、フェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグ氏とテスラの創設者イーロン・マスク氏がベーシック・インカムに賛意を表明した。フィンランドでは中道政権の提案で、今年初めから2年間、実践的な試みが行われている。抽選で選ばれた2千人が2年間、毎月約600フランを受け取るというもので、唯一の参加条件は長期失業者であることだ。

ドイツ北部のシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州では、キリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟(党のシンボルカラーは黒)、自由民主党(黄色)、緑の党(緑色)から成るジャマイカ連立(ジャマイカの国旗と同じ配色になったため)と呼ばれる新政権が、ベーシック・インカムの試験的プロジェクトの実施に同意した。ドイツでは別のプロジェクトも行われている。全国民の中から毎月、抽選で選ばれた一人に1千ユーロ(約13万円)の生活保障を支給し、その資金はクラウドファンディングで募るというものだ。

また、国際的な関心の高まりを示す明らかなサインとして、スイスインフォの読者数も忘れてはならない。スイスインフォは昨年、#DearDemocracyというハッシュタグを付けて特集したところ、特にイタリア語、日本語、ロシア語圏の読者が急増した。

賛成派と反対派の多彩な連立

スイスの国民投票前にもすでに見られたように、今や世界中でベーシック・インカムの賛成派と反対派が新しく多彩な連立を作っている。賛成派は社会自由主義志向の企業家や芸術家、民主主義活動家が多く、反対派は労働組合の関係者や保守的な金融畑の政治家が目立つ。

スイスがそうだったように、オープンな問題提起やその解決策に対して、人々の反応は懐疑的だ。他国で全国レベルのベーシック・インカム導入を提案しても、簡単には受け入れられないだろう。

それでも、このテーマは今後も関心の的となるはずだ。それは、ベーシック・インカムの議論や試験的プロジェクトが世界各地に広がっているだけでなく、スイスの世論調査機関gfs.bernが16年の国民投票後に行ったアンケート調査では、回答者の62%が「この投票がベーシック・インカムにピリオドを打ったわけではない」と答えた。1年前の投票結果に喜んでいるのは勝者だけではない。敗者もまた満足しているのだ。

ダニエル・ヘニ、作家

「労働環境のロボット化が進むにつれて、ベーシック・インカムのアイデアは今後数年間でますます重要になるだろう」

イニシアチブを発起し、スイスに議論を巻き起こしたダニエル・ハニさんは、ドイツ人のフィリップ・コフィツェさんとベーシック・インカムに関する本を2冊出版している。コメント入力して頂くことができます。